月7話 お前のためのケーキ

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シュニ―『はあ……もうすこししてから渡そうと思ったのに』

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甘い匂いを漂わせていたシュニ―君は、しばらく肩を落としてうなだれていたけれど…-。

やがて覚悟を決めたかのように表情を引きしめ、私に手を差し出した。

シュニ―「ついて来て」

〇〇「え?」

彼の声は有無を言わさない響きを持っていて、私は引っ張られるようにして部屋を後にしたのだった…-。

……

別の部屋の前までたどり着き、シュニ―君が大きな扉をゆっくりと押し開けると…-。

〇〇「……!」

視界に飛び込んできたものに、私は思わず息を呑んだ。

テーブルの中央に、大きなチョコレートケーキが飾られている。

〇〇「シュニ―君、これ…-」

シュニ―「もう。お前が急かすようなことするから」

不機嫌そうに口を尖らせるシュニ―君の頬が、ほんのりと赤色に染まっている。

〇〇「それじゃあ、甘い匂いは……」

シュニ―「これだよ。 本当はスノウクリスタルをあげようと思ってたんだけど。 お前が自分で買いたいって言ってたから……別のものを用意したんだ」

そう言うと、シュニ―君は無言でソファに座るよう私を促した。

〇〇「ありがとうございます!」

彼からの贈り物が本当に嬉しくて、自然と口元がほころんでしまう。

つやつやと輝くイチゴがのせられたチョコレートケーキからは、甘い香りが漂っていて…-。

(でも……どうして、シュニ―君からあんなに甘い匂いがしたんだろう)

いくら香りが強いケーキがあったとしても、シュニ―君にその匂いが簡単に移るとは思えない。

(……もしかして)

まさかと思いつつも、私はおずおずと口を開いた。

〇〇「これ、もしかして……シュニ―君が作ってくれたんですか?」

シュニ―「!」

シュニ―君は真っ赤な瞳を見開き、勢いよく首を横に振った。

シュニ―「そんなわけないじゃん……」

彼の反応に、心がそわそわと期待にくすぐられる。

〇〇「本当……ですか?」

シュニ―「本当だって! 高潔なる雪の一族である僕が、手作りなんてするわけないでしょ!」

私と視線を合わせようとしないシュニ―君の顔を覗き込み、銀色のまつ毛の下の瞳を見つめた。

やがて……

シュニ―「……っ。 ……そうだよ! 僕が自分で作った」

シュニ―君はそう言い放ち、腕を組んでそっぽを向いてしまった。

その顔はむくれているようで、でもどこか誇らしげな雰囲気を湛えていて…-。

(シュニ―君が、私のために作ってくれるなんて……)

幸せな気持ちに満たされ、私は感謝を込めてシュニ―君に言葉を紡ぐ。

〇〇「ありがとうございます、シュニ―君。 すごく嬉しいです」

笑顔でお礼を言うと……シュニ―君の頬がやっと、嬉しそうに緩められたのだった…-。

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