月7話 森での二人

夜が深まり、ますます空気が冷たくなっていく…-。

森で足を滑らせ、動けなくなったところを、カノトさんが見つけてくれた…-。

カノト「……〇〇」

でも、私を抱きしめてくれたカノトさんは、むっとした表情で……

(カノトさん、怒ってる……? どうして……?)

理由がわからなくて、声がうまく出せない。

(もしかして、勝手に移動して迷ったから……?)

〇〇「ごめんなさい。私、こんな……」

カノトさんは、綺麗な髪を揺らしながら、首を振った。

伏せられた長いまつ毛が、震えている。

カノト「謝らないで……違うから。違う、けど……」

形のいい唇を噛み締めて言い淀むカノトさんに、私は目を何度も瞬かせた。

カノト「上、上がるよ」

カノトさんは顔を強張らせたまま、私を一度解放すると、まずは自分だけ崖上によじ登る。

そして上から手を差し伸べて、崖の上に私を引っ張り上げてくれた。

〇〇「ありがとうございます」

カノト「……」

カノトさんは私の手をきつく掴んで離さないまま、歩き始める。

(カノトさん? やっぱり、様子が変……)

〇〇「あの…-」

ためらいがちに声をかけると、黙って先を歩いていた彼が、突然足を止めた。

〇〇「……?」

カノト「〇〇が危ない目、あっているのかと思うと、すごく怖かった……」

肩を震わせながら絞り出すような声で言われる。

ハッとして、私は目を見開いた。

(それであんな表情を……)

〇〇「ごめんなさい……」

こちらを振り向くカノトさんは、水晶玉のように美しい瞳に涙の膜を貼っていた。

カノト「本当に、本当に、怖かったんだから……」

〇〇「……心配してくれて、ありがとう」

カノト「……っ」

私は自然とカノトさんに手を伸ばし、柔らかいその髪を優しく撫でる。

(カノトさんは、どうしてこんなに私の心を震わせるんだろう……?)

カノト「……っ」

撫でられたことに驚いたのか、カノトさんは瞳を見開く。

けれど、すぐに気持ちよさそうに今度は目を細めて……

(もっと撫でていたいけど……そういうわけにもいかないよね)

名残惜しさを感じながら、そっと手を離す。

カノトさんも切なそうな眼差しを私に注いだ後、口を開く。

カノト「〇〇のために森に行こうと思ったけど、もういい……」

(え……? どういう意味?)

怒っているわけではないとはわかるけれど、カノトさんの真意はわからないまま……

森の闇と静けさが、そんな私の心を揺さぶった…-。

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