月6話 非常事態

陣形の事でメンバーがもめてしまい、カノエさんのチームはバラバラになってしまった。

祭りまで日がないというのに、チームの仲間は一人、また一人と練習に来なくなって……

カノエ「そこ、もっと大きく動きを意識して!」

とうとう今日は数人となったけれど、それでもカノエさんはいつも通りに練習を続けている。

(このままじゃ……)

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カノエ「必死に練習してるって……努力してるなんて、男がわざわざ言うか?」

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(一人で頑張ることも、もちろん大事だと思う……)

(けど、今必要なのは)

休憩の時、私は思いきって傍にやってきたカノエさんに声をかけた。

〇〇「あの」

カノエ「何だ?」

カノエさんは汗だくになった額を拭って、私を見据える。

気後れしそうになるけれど、必死に気持ちを立て直しながら言葉を続けた。

〇〇「黙って頑張る姿を見せるのもいいと思います。でも……。 時には、相手に伝わるまで言葉を交わすことも大事だって……そう思うんです」

勇気をかき集めて、カノエさんを真っ直ぐ見据えて一生懸命に伝える。

すると、カノエさんは一瞬驚いたような顔をしてから口を開いた。

カノエ「……生意気な女だ」

〇〇「……っ」

伸びてきたカノエさんの手が、私の頭をくしゃりと乱雑に撫でた。

(温かくて、優しい手……)

粗暴なようで優しいその撫で方は、カノエさんの人柄そのもののように思える。

カノエ「……昔からどうも、気持ちを伝えることが下手でな。 これに、そんなものがなくても……皆の心は一つ二まとめることはできると思ってたんだ」

〇〇「……言葉にしないと、伝わらないこともあると思います」

そう言うと、彼の琥珀色の瞳が困ったように細められた。

カノエ「……そういうのもありかもな」

ぼそりと漏れた言葉が、私の胸に沁み渡っていった…―。

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