月8話 甘い罠

その夜…―。

夕食後に部屋で休んでいると、ジョシュアさんがメイドさんを伴って訪ねてきた。

〇〇「どうしたんですか?」

ジョシュア「黙ってて」

そう言って、私のクローゼットを勢いよく開いて……

ジョシュア「これは、レディにふさわしいとは言えない。 これも……」

次々と洋服を取り出していくジョシュアさんを、見守ることしかできずにいた。

ジョシュア「そうだな……今着ている服も、適当なものに着替えて」

〇〇「え?」

ジョシュア「早く」

〇〇「は、はい!」

(でも、どれも一人で着られそうにないものばかり)

ジョシュアさんが用意してくれたドレスには、どれもコルセットや細かなボタンがついていた。

(どうしよう)

ジョシュア「ああ、メイドに着替えを手伝ってもらうといい。オレはしばらく出てるから」

〇〇「……はい」

扉から出て行くジョシュアさんの後ろ姿を見送りながら、私は途方にくれてしまう。

(着替えくらいで、メイドさんにご迷惑をかけられない)

クローゼットをしばらく眺めていると、一着、細かなボタンもコルセットもないワンピースを見つけた。

(かわいい。それに、これなら一人で着られるかも)

胸元にリボンをあしらった柔らかな生地に、ふんわりとしたスカート。

私はそのワンピースに着替えた。

〇〇「ジョシュアさん、あの……着替えました」

部屋の外で待つ、ジョシュアさんに声をかけると…―。

メイド「あ……〇〇様……!」

〇〇「え?」

メイドさんが慌てた様子を見せたけれど、私の声にジョシュアさんが入って来た。

彼は驚いたように目を見開き、私は首を傾げた。

ジョシュア「……ペナルティ一つかな」

〇〇「え?」

ジョシュア「レディであるなら、そんな姿を男性に見せてはいけない」

〇〇「そんな姿……?」

ジョシュア「それ、ネグリジェだよ」

〇〇「え……っ!?」

ジョシュア「君のもといた世界では、寝る時にそういうのは着ないのかな」

くすくすと笑いながら、ジョシュアさんは後ろ手に部屋の扉を閉めた。

(だって、これ、ワンピースみたいで……)

頬が熱を持っていくのがわかり、私は彼の顔を見ることができなくなってしまった。

ジョシュア「ネグリジェは、言うなれば素肌同然」

ジョシュアさんは、クローゼットから上着を取り出し、私の肩にかけてくれる。

ジョシュア「次に同じことしたら……変な気を起こされても、文句は言えないからね」

(恥ずかしい……)

かけてもらった上着の前をかき合わせて、私は部屋の隅で縮こまった。

ジョシュア「そうだ。言い忘れてたけど……次からペナルティ取ったらお仕置きだから」

〇〇「えっ?」

(お、お仕置き……!?)

ジョシュア「両手の甲を鞭で叩かれる」

〇〇「……っ」

ジョシュア「この国では、昔からそうやって躾けるんだよ」

(しつけ……?)

ジョシュア「ああ、そうだ。明日のアフタヌーンティーはオレの乳兄弟も同席させるから。 彼は一応身分の高い貴族だし、粗相のないようにね。 お返事は? ペナルティ、欲しい?」

慌てて首を横にふり、なんとか返事をする。

〇〇「は……はい……」

静かな月夜に、胸がドキドキと音を立てていた…―。

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