月最終話 マシュマロの悪戯

しっかりと繋がれた手の強さと、伝わる熱に鼓動が速まる……

ペルラさんと手を繋いで歩く街は、これまでと少し違って感じられた。

(すごく、ドキドキする……)

ペルラ「はい、○○」

ペルラさんは約束通り、私にお菓子を買ってくれた。

(マシュマロだ……かわいい)

○○「ありがとうございます、ペルラさん」

彼からお菓子を受け取ろうとした、その時…―。

ペルラ「お菓子をくれなきゃ悪戯するぞー……って言って?」

○○「え?」

私に向けて差し出していたお菓子をひょいと引っ込め、ペルラさんは楽しそうに口角を上げる。

○○「あの……?」

ペルラ「……」

声をかけても、ペルラさんはくすくすと笑みを浮かべるだけで……

(ペルラさん……?)

夜のロトリアの街を背にする彼は、なんだか少し怪しげに見えた。

○○「お……お菓子をくれなきゃ悪戯するぞー」

戸惑いながらも、ペルラさんに言われるままに明るい声でそう言ってみる。

すると……

 

ペルラ「じゃあ、あーんして?」

○○「えっ?」

包みを開き、ペルラさんがマシュマロを一つ摘み上げる。

ペルラ「ぼくが食べさせてあげる。だから、あーん……」

目の前にいるペルラさんの方こそ、悪戯しているような表情を浮かべていて、なんだか楽しそうで……

(ちょっと恥ずかしいけど……)

覚悟を決めて、そっと口を開けば……

ペルラ「やっぱり、あーげない」

お菓子が私の唇に触れる寸前で、彼はぴたりと手の動きを止めた。

○○「えっ!」

綺麗な瞳が、楽しげに細められる。

○○「……ペルラさん?」

ペルラ「ぼく、お菓子をあげなかったよ? ……その場合って、悪戯されちゃうんだよね? ……ぼくが喜ぶ悪戯、考えてみてくれない?」

○○「……っ」

ペルラさんの瞳が、見たことのない妖艶さを秘めてじっと私を射抜く。

どくんと大きく鼓動が跳ねた。

ペルラ「ねえ、悪戯は……?」

ねだるような声色で急かされ、鼓動はますます大きくなって……

(ペルラさんの方が……悪戯してるみたい)

ペルラ「ぼくに、悪戯しないの?」

○○「あ、あの、だって……今は従者さんも見てますし……」

ペルラ「……」

だけどペルラさんは許してくれる様子もなく……

ペルラ「へぇ……従者に見られたら困るような悪戯、考えてたんだ」

○○「っ……!」

ペルラ「していいよ? きみがぼくにしたいこと、全部」

甘い囁きに、心が蕩けていく。

夜の市街地に照らされて輝く瞳は、いっそう魅惑的に私の目に映った。

ペルラさんはお菓子を自分の口に放り込み、じりと私に近寄る。

ペルラ「○○……?」

名前を呼ばれれば、その唇から微かに漏れる甘いお菓子の香りが、ふわりと私の鼻孔を刺激した。

その甘い誘惑に吸い込まれるように唇を寄せ、重ね合わせる。

(本当に……甘い……)

従者さんから隠すように、ペルラさんが私を抱きすくめる。

ペルラ「……しないの? だったら…―」

○○「……っ」

ぺろりと、彼の舌先が私の頬をなぞった。

ペルラ「パレードでは、猫になりきらないといけないからね……?」

(猫に……)

彼の白い頬にそっと手をあて、撫でてみる。

すると、ペルラさんは気持ちよさそうに目を細めて……

ペルラ「……それが、悪戯? かわいいね」

そう言ってもう一つ、マシュマロを口にくわえた後……

○○「ん……」

もう一度触れ合った彼の唇から、私の口にマシュマロが押し込まれる。

甘い感覚に全身が支配され、体を動かすことすらできなかった。

ペルラ「……はい。ちゃんとあげたからね」

にっこりと笑った後、ペルラさんが再び私の手を取り歩き出す。

ペルラ「にゃー」

彼の楽しそうな鳴き声が、収穫祭の夜に秘めやかにこだました…―。

おわり。

<<月7話||月SS>>