月7話 俺がアリスを守るから

星の光が、厚い雲に見え隠れする闇夜の中……

私達は、その暗さにまぎれるように街道をひた走った…ー。

ハーツ君は手にしていた外套で私を包み、常に私を守るようにして寄り添ってくれた。

ハーツ「アリス……本当にごめん。俺、この国の事情も考えないで、お前の名前呼んだりして。 だけど、これだけはわかって欲しいんだ。 この国は確かに、アリスのせいで、昔大変な目にあったんだと思う。 だからってそれは昔のアリスがや ったことだろ? 今のアリスにはなんの関係もない……。 それに……俺は昔のアリスが、そんなひどい奴だったなんて思えないし」

◯◯「ハーツ君……」

名を呼ぶと、私を抱き寄せる彼の腕の力がさらに強くなる。

必ず守ると、そう覚悟した力強さをその腕に感じて、胸に広がる不安が少しだけ和らぐ。

ハーツ「今のアリスを処刑する理由なんて、誰にもない」

そう彼が私に語った時、遠くの方に揺れ動く灯りが見えた。

ハーツ「あの旗印、城からの追っ手だ」

◯◯「え……!?」

ハーツ君は身をひるがえして、私を抱えたままその場にあった岩陰に身を隠した。

ハーツ「……」

足音が、私達の方へ近づいてくる。

心臓が口から出てしまいそうなくらい、緊張に胸の鼓動が速くなる。

◯◯「……っ」

ぎゅっと、ハーツ君が周りから隠すように、彼の胸に私の頭を押しあてた。

ハーツ君の息づかいをすぐ傍で感じると、少しだけ心が和らいだ……

……

しばらくすると、足音は遠ざかっていった。

◯◯「……よかった、見つからなくて……」

意図せずに、肩まで震えていたらしい。

ハーツ君は私の肩を抱いて、そのまま優しく背を撫でてくれた。

ハーツ「平気だよ、もし見つかっても、お前だけは絶対に逃がしてやる。 俺のアリスには指一本触れさせない」

◯◯「ハーツ君……」

赤い炎を宿したような、真剣な瞳が私を見つめている。

(どうしてドキドキしてるんだろう……前に一緒に逃げた時も同じだった)

(もしかして、私はハーツ君のことを……)

意識すると、鼓動がさらに速まった気がする。

ハーツ「そろそろ行こう、もう少し行けば国境近くの森に入れる」

◯◯「うん……」

(ハーツ君、こんなに頼りになる人だったんだ……)

私は決して離してしまわないように、ハーツ君の手を強く握りしめた。

どこかで、不安げに鳴くフクロウの声が聞こえてくる。

この世界で彼だけが唯一、私の味方のように思えた…ー。

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