月最終話 想いは秘めやかに…

銃声がいっせいに鳴り響いた。

(グウィードさん……!)

銃声の方向へ、彼は真っ直ぐに駆け出した。

追手「くそっ! なぜ当たらない!」

グウィード「答えを教えようか?」

追手「なっ……!?」

グウィードさんがダンスを踊るように優雅に宙を舞い、追手に剣先を突き付けて、口の端をあげる。

グウィード「君達が遅いからだよ♠」

彼の細く長い剣が、煌めいた。

……

グウィードさんの強さに圧倒されて、男性達は逃げて行った。

(よかった……)

彼の無事に、体から力が抜けていく。

グウィード「子猫ちゃん……?」

立ち尽くす私を見つめて、グウィードさんは目を見開いた。

グウィード「どうして逃げなかったんだい?いけない子だね」

花冠を抱きしめたまま、私は震える足で彼の方へ走った。

〇〇「嫌です……」

グウィード「子猫ちゃん……?」

〇〇「夢の中だけなんて、嫌です……」

グウィード「君という人は……」

グウィードさんが私を抱き寄せた。

彼と私の間で、花冠が音を立てる。

グウィード「……ボロボロになってしまったね」

〇〇「はい……」

グウィードさんの長い指が、私の顎をそっと持ち上げた。

まつ毛が触れそうな距離で、彼が私を見つめている。

グウィード「君は、何を言っているのかわかっているのかい? これからも今みたいな危険な事が起きるかもしれないんだよ?」

〇〇「今みたいに……?」

グウィード「僕には義理の母と弟がいてね。どうやら僕が邪魔らしい。 けれど、僕は彼女達と争う気はない。興味もない。 彼女達の気が済むまで、僕は逃げ続けるつもりだ。夜の闇のようにひっそりと……。 それでも……側にいると?」

〇〇「はい……」

グウィード「まいったな、花言葉の通りになってしまうとはね」

〇〇「花言葉?」

グウィード「そう、例えばこういうこと」

目を細め笑うと、グウィードさんが私を抱き寄せて……

私の額に、そっと口づけを落とした。

グウィード「花言葉は『秘めやかな愛』」

囁く声が、吐息に交じる。

戦いの直後だからか、私の肩を抱くグウィードさんの手がとても熱い。

グウィード「二人で、夜の闇に消えよう。子猫ちゃん。 そして……星空の夢を一緒に見ようか」

白い仮面の奥の瞳が、少し迷いを含んだように揺れながら、私を映し出している。

〇〇「はい……グウィードさんと、一緒にいさせてください」

はっきりとそう言葉を紡ぐと……

グウィード「ありがとう」

そう言って、彼は再び私に顔を近づけた。

〇〇「ん……」

今度は、私の唇にゆっくりと彼の唇が押し当てられ……

彼のしなやかな指が、私の胸元のリボンに触れる。

〇〇「グウィードさ……」

グウィード「〇〇……」

月明かりが舞い踊るように私達に降りそそぎ、私はゆっくりと瞳を閉じた。

彼の熱を感じながら……

閉じた瞳には、二人で見たあの美しい星空が映し出されていた…-。

おわり。

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