月7話 名前を呼ばれて

グレイシア君の姿を見た人々は、驚き一色に染まった。

そして…―。

城の女官「グレイシア王子……よくぞご無事で!」

スノウフィリアの大臣「どれだけ皆が王子のことを心配したか!ささ、早く皆に知らせなければ……」

途端にざわめきがその場に広がり、

通路の奥からグレイシア君の帰還を聞きつけた人々が姿を見せる。

人々は口々にグレイシア君の無事を喜び、満面の笑みや涙を浮かべている。

グレイシア「……」

○○「ちゃんと皆さん、グレイシア君を見ています」

目をまばたかせていたグレイシア君の後ろから耳打ちすると、彼は振り向いて……

グレイシア「ああ……そうだな、○○」

○○「……!」

(今、グレイシア君……初めて私のこと、名前で呼んでくれた?)

○○「嬉しいです、名前で呼んでくれて」

彼にその気持ちを伝えたくて、にっこりと笑いかけると…―。

グレイシア「……!!」

グレイシア君が、赤い瞳を見開いて固まってしまった。

○○「どうしましたか?」

不思議に思って、彼の顔を覗き込むと…―。

グレイシア「な、何でもねえよ」

勢いよく、そっぽを向かれてしまった。

(グレイシア君……?)

こころなしか、彼の耳が赤く染まっているような気がした…―。

……

その後、帰還の報がスノウフィリア王の耳に届き、

私はトロイメアの姫として、王子の恩人として、城へ数日間滞在することになった。

だけど数日が経ち、私は気まずい気持ちを抱えていた。

と、いうのも……

○○「あ……グレイシア君!」

グレイシア「……何だよ」

○○「今日、お城の人のご案内でスノウフィリアの博物館に行くんですけど、グレイシア君も…―」

グレイシア「……俺は忙しいんだ。じゃあな」

○○「あ……」

グレイシア君の私に対する態度が、急に冷たくなってしまったからだった…―。

用意してもらった部屋の椅子に座り込んで、私は頬杖をついていた。

(私、何かグレイシア君の気に障ることをしてしまったのかな)

ぼうっと彼のことを考えていると、湖で二人で氷の湖を滑っていた時のことが思い起こされる。

(あの時は……距離なんて感じなかったのに)

大きなため息を一つ吐いた、その時…―。

??「○○様」

部屋の扉がノックされたのと同時に、誰かの声が聞こえた。

○○「はい」

扉が開くと、グレイシア君の従者の方が立っていた。

従者「グレイシア様がお呼びでして……申し訳ありませんが、お部屋まで一緒に来ていただけますか」

○○「え?」

(何だろう……)

胸の音が、自分でも驚くほど大きくなっていく。

深呼吸を一つして、私はグレイシア君の部屋へと歩き始めた…―。

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