月最終話 子ども扱いしないで

グラスを持つ私の手に、グレアム君の手が重なる…―。

グレアム「俺は、子どもじゃない……」

○○「は、はい。わかってますよ」

グレアム君の瞳が真っすぐ私を見つめてくる。初めて見せる、男性的なその瞳の強さに、鼓動が早まって……

グレアム「違うって、証明してやる」

○○「え……?」

ぐっと重なる手の強さが増したかと思えば、そのまま手を引き寄せられて……

私はあっという間に、ベッドの上に押し倒されていた。

グレアム「っ……抵抗、しないんだね」

グレアム君は余裕のない顔で言った後、深く息を吐き出した。

そして、にやりと笑うと……

グレアム「俺のこと惑わしたのは、お前の方だから……」

たっぷりと焦らすように時間をかけて、眼鏡を外して……

その仕草が、驚くほど妖艶に思えて、鼓動が跳ね上がった。

グレアム「いつまでも子ども扱いしていられるか、見物だけど……。 どうなのかな? 大人のお姉さんは」

まるで、何かのスイッチが切り替わったように、グレアム君が大人な顔を見せる。

だけど、それは少年と大人の狭間の危うい場所に立っているようで……

○○「私……子ども扱いなんて、してないです」

グレアム「嘘つき。だって、こんなこと俺をできるなんて、お前は考えもしなかったよね」

○○「それは……」

グレアム「俺のことを、男とも思わなかったはずだ。 俺はもう立派な大人だし、この頭の中ではいくらだって、思い通りの恋愛も描けるのに……」

○○「ちゃんと大人だって、わかってますよ」

グレアム「わかってない。 だってお前は……逃げたりもしないじゃないか」

○○「っ……それは」

胸はどんどん苦しくなって……苦しくなっただけ、鼓動が早まる。

グレアム「お前だけ余裕があるなんて、最悪だ……」

○○「グレアム君……?」

グレアム「っ……」

○○「痛……っ」

グレアム君が、私の手首を強く押さえつけた。

その瞬間、彼の男性的な部分を再び感じて…―。

(胸が、苦しい……)

グレアム「お前といると、筋書き通りにならないことだらけ。 この俺が、天才と呼ばれたグレアムが、失敗してばかりだ」

○○「そんな、失敗だなんて……」

グレアム「……失敗だ。 何でお前の前では、思い通りにならないのか……教えてよ」

グレアム君の顔が、ゆっくりと近づいてくる。

○○「グレアム君……」

心臓が、うるさいくらいに高鳴る。

グレアム「……っ」

けれどそれは、彼も一緒だったようで……

○○「……グレアム君……大丈夫ですか?」

まだ動悸は止めないけれど、私よりも緊張している様子のグレアム君に、そう声をかけた。

すると……

グレアム「お前……まだそんな、余裕を……」

悔しげに歪められたグレアム君の表情が、何かを悟ったように、ふっと和らいだ。

(え……)

グレアム「わかった……後悔しても知らないからね。 その余裕、俺がはぎ取ってやる。 お前の身も心も、今日から俺のものだ。本当の俺を、わからせてやる……」

そう言うとグレアム君は、愉しげに笑いながら、私の下唇をぺろりと舐めた。

○○「っ……」

私の唇に、艶めかしい真っ赤な舌が走る。

得も言われぬ胸の高鳴りを感じて……私は深く息を吸い込んだ。

グレアム「ね。大人のお姉さん。今日は俺と、素敵な夜を過ごそうね……」

そう言ってグレアムくんは私に、深く長いキスをした。

熱のこもったそのキスは、ひどく甘くて……まるで早熟した果実のようだと、そんなことを思ったのだった…―。

おわり。

<<月7話