月8話 怒りの炎

野盗が出たとの報せが入り、ゲイリーさんが出て行ってから、どれくらいの時間が経っただろう。

ゲイリーさんに言われた通り、小屋の中で待っていると……

コンコンと小屋の入口が叩かれた。

(ゲイリーさんが戻って来たのかな?)

胸を弾ませて、扉を開けると……

男1「ゲイリー王子はどこだ?」

屈強な男が二人、扉の向こうには立っていた。

〇〇「え……?」

(ゲイリーさんの素性を知ってる……!?)

嫌な予感がして慌てて扉を閉めようとすると、

素早く手が伸びてきて、それを阻止される。

男1「王子はいないようだな」

男2「なら、お前を人質にしてゲイリー王子をおびき寄せるまでだ。こっちへ来い」

〇〇「嫌っ……やめて!」

男1「こいつっ……! 大人しくしろ!」

腕を掴まれて必死に抵抗すると、男に頬を勢いよく叩かれた。

〇〇「!!」

その拍子に、床に倒れ込んでしまう。

男2「手こずらせやがって」

痛みと恐怖が頭を刺激して、体が動かない。

再度、ぐいと腕を掴まれたその時だった。

〇〇「っ!?」

ボウガンの矢が風を切り、突き刺さる衝撃音が走った。

男2「ぎゃああ!!」

私を捕らえていた男の腕に、ボウガンの矢が深く突き刺さっていた。

男1「な、何だ!?」

ゲイリー「何をしている……」

〇〇「ゲイリーさん!」

怒りの炎を背負ったような形相のゲイリーさんが、次のボウガンの矢に手を伸ばす。

ゲイリー「今度は心臓を射抜く」

男1「ひっ……!」

ゲイリーさんが、ゆっくりとボウガンを引き構える。

男2「こ、こいつ本気だっ」

ゲイリー「おまえ達、あの女の手の者か。 ○○に手を出して……。 許されると思うな…殺してやる……!」

逃げる男を目がけて、ゲイリーさんがボウガンを射る

〇〇「ゲ、ゲイリーさん!!」

ぞくりと恐怖が体を凍らせる程、凍てついた恐ろしい目をして、ゲイリーさんは矢を放った。

男1「うぐっ……!」

男が一人、倒れ込む。

ボウガンの矢が足を貫通していた。

そんな男の側へゲイリーさんは歩を進め、眉間へとボウガンの矢の先を定めた。

男2「ひっ、あ、あ……た、助けてくれっ」

〇〇「ゲイリーさん!!」

どうにかしようにも、もう一人の男も放心状態で、私も足がすくんでその場から動くことができなかった。

ゲイリー「すぐにあの憎い女も一緒に地獄へ送り込んでやる」

憎しみに支配されたような、低く恐ろしい声音が耳に届く。

私はたまらず、声を振り絞って叫んだ。

〇〇「ゲイリーさん! やめて! やめて下さい!!」

瞳を閉じて、優しいゲイリーさんの瞳を思い出しながらあらん限りの声で叫ぶ。

〇〇「やめて……!!」

それから、どれくらいの時間、私はうずくまっていたのだろう。

ゲイリー「……」

私の前で立ち尽くす人の気配に、私はゆっくりと顔を上げた。

ゲイリー「呪いに……負けてしまったようだ……」

ゲイリーさんの後ろで、男達が二人倒れているのが見える。

何も映していない空洞のような瞳が、静かにまばたきをした…―。

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