月7話 忙殺の犠牲

今日も、ピリピリとした空気が城内に満ちている…―。

起きてしまった仕事の問題への対処は、予想以上に時間がかかっているようだった。

フォルカー「……」

フォルカーさんは、通常業務もこなしつつその対処に追われているらしく、職場にこもりがちで、自室へ戻ってくることが少なくなっている…―。

(このままで、本当に大丈夫なのかな?)

(フォルカーさんの体も心配だし、それに……)

あることを思い出し、私は慌ててフォルカーさんの部屋へ向かった。

(勝手にごめんなさい……!)

そう思いながら、フォルカーさんの部屋の扉を開ける。

すると、ルビが頭を重そうにもたげて私を見た。

(元気が……ない?)

(やっぱり、忙しくてルビのお世話がなかなかできてなかったのかも)

急いで駆け寄り抱き上げると、腕の中でくったりと身体の力を抜いてしまう。

(大変……!)

弱り切ってしまったルビに、心が凍りついていく。

〇〇「すいません、誰か…―!!」

私は、扉の外へ向かって叫んだ…―。

……

ルビを獣医さんに預けた後、私はフォルカーさんの元へと向かった。

開け放たれた扉から中を覗くと、皆忙しく仕事をしているようだった。

充満する雰囲気はどこか重く、澱んでいるように感じられる。

〇〇「すみません、フォルカーさん……」

控えめに呼びかけると、フォルカーさんはちらりと私を見てくれたけれど、すぐに視線を書類へと戻してしまった。

フォルカー「どうした」

〇〇「それが……」

なるべく仕事の邪魔をしないようにと意識しながら、フォルカーさんの傍で話しかける。

〇〇「ルビくんの調子が悪いみたいなんです。だから今、獣医さんに預けていて……」

そう告げると、フォルカーさんの眉がぴくりと動いた。

フォルカー「……」

けれど……すぐにまた、仕事をする険しい表情になり書類をめくる。

フォルカー「獣医に診せたのなら、俺が戻ったところでどうしようもない」

〇〇「そんな……!」

フォルカー「今は大事な時だ。見ての通り忙しくもある。 この状態で仕事を抜けることは不可能だ」

(フォルカーさん……辛そうな表情なのに)

フォルカー「後で……様子を見に戻る」

絞り出したような声を出した後、それ以上は話すことがないと言わんばかりに、フォルカーさんは新しい書類を手に取った。

〇〇「……私、ルビくんについてますね」

フォルカー「……悪いな」

暗い気持ちを抱えたまま、フォルカーさんに背を向け、部屋を立ち去ろうとすると……

事務官「すみません、皆ピリピリしていて……」

部下の一人が申し訳なさそうに話しかけてくれる。

〇〇「いいえ。お仕事中にお邪魔しました……」

事務官「もうすぐ落ち着くので、フォルカー王子もその後戻られると思います。 ますます確認体制が厳しくなって、皆も参ってて。何の配慮もできなくてすみません」

〇〇「いいえ、そんな……お仕事、頑張ってください」

事情を教えてもらい、その場を後にしながらも、心が重く苦しくて仕方がなかった…―。

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