月7話 忙しない厨房

夜が明けて翌日…―。

ついにビートン・フィルムパークはプレオープンの日を迎えた。

パークはさまざまな国から、名だたる著名人や王子達が招待されて賑わっている。

その一方……

(忙しい……!)

夕方になり、ディナータイムを前にした厨房はめまぐるしい忙しさを迎えていた。

ゾンビメイド「招待客の方々がそろそろ見えるようです!前菜急いでください!」

ウィル「了解。そこ、ソースの仕込みまだ?」

コック「はい、もうあと5分でいけます!」

欠勤した調理長に代わり、ウィルさんが厨房に指示を飛ばす。

○○「ウィルさん、オーブンの準備、整いました!」

私もエプロンをつけ、そんな彼の横で調理を手伝っていた。

ウィル「うん、ありがとう○○。ちょっと待ってて」

彼は鮮やかな手つきで鉄板の上にアートのようなオブジェを作る。

(わ……っ)

材料は鳥手羽とモモ肉だけど、ウィルさんに盛られたそれは、人の手のようにしか見えない。

(ちょっと怖いけど……やっぱりウィルさんってすごいな)

ウィル「はい、出来上がり!○○、仕上げ頼んだよ」

○○「はい!」

注意深く彼から鉄板を受け取り、余熱で温めておいたオーブンに入れる。

ウィル「ふう……」

改めて厨房の様子を見回したウィルさんが、片方の眉を吊り上げた。

ウィル「スタッフの動きをもうちょっとマニュアル化した方がよさそうだね」

彼はあらかじめ調理長が作っていたマニュアルノートを台の上に開く。

○○「……大丈夫でしょうか?」

ウィル「心配かい?」

○○「はい」

(パークの成功はウィルさんや映画の国の皆さんたっての願いだし)

厨房からホールの外へ視線を移し、様子をうかがう。

すると……

ウィル「大丈夫」

○○「……っ」

ウィルさんがペンを手にしたまま、いつの間にか私の隣に立っていた。

ウィル「幸いグランドオープン前だから、今のうちにイレギュラーの対応もマニュアル化できれば問題ないね」

弾む声でそう言うウィルさんの顔は、いつになく血色がいい。

(ウィルさん、もしかして)

○○「……楽しんでます?」

ウィル「ん?」

その時、厨房の中にベルが鳴ったと同時にメイドの声が響いた。

ゾンビメイド「最初のゲストがお越しになられました!」

厨房に漂っていた空気が、一瞬にして張り詰めた…―。

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