月8話 甘く軋む心

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〇〇『私……ディオンさんと一緒にいられれば、それで…-』

ディオン『なるほど……わかった。 では、早速準備をしよう』

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次の朝…-。

(ディオン、さん……?)

いつもの朝は執事さんが持ってきてくれていた甘い紅茶のお盆を、今朝はディオンさんがささげ持っている。

(どうして……っ)

寝起きの私は、恥ずかしくて、すぐに掛布にもぐりこんだ。

ディオン「何をしている」

掛布の端を、ディオンさんがそっとまくり上げる。

〇〇「ディオンさんこそ、何を……っ」

ディオン「お前が昨日言ったんだ。側にいて欲しいと。 だから、お前の執事になってやろうかと思ってな」

(どうしてそうなるの……)

ディオン「はっきり言おう。俺はお前の心を得るためだったら、何でもする。 まあとにかくそう言うことで、お前が振り向くまで、こうして尽くしてやる。 ……覚悟しとけよ」

(そんな……っ)

頬が染まっていくのがわかり、メイドさんがディオンさんを追い出してくれるまで、ベッドから出ることができなかった…-。

……

昼下がり…-。

(やっと、抜け出せた)

ディオンさんの目を盗んで何とか廊下に出ると……

ディオン「……見つけた。まったく、どうしようもないじゃじゃ馬だな」

〇〇「ディオンさんっ」

すぐにディオンさんが扉を開けて出て来て、私の前に立ちふさがった。

ディオン「……何故逃げた。 側にいて欲しかったんじゃないのか?」

(そうだけど……)

(でも、ずっと側にいると、胸がドキドキして……)

ディオン「〇〇……?」

ディオンさんが、私の髪をそっと撫でる。

〇〇「や……っ」

胸が飛び跳ねて思わず逃げると、ディオンさんは悲しそうな顔をした。

〇〇「あ、違う……。 違うの…ディオンさんが近くにいると……胸がドキドキして、苦しくて」

驚いた顔で私を見ていたディオンさんが、ふと頬を緩める。

〇〇「ごめんなさい……」

ディオン「〇〇……」

ディオンさんは私を強く抱きしめる。

〇〇「苦しい……ディオンさん」

ディオン「〇〇……好きだ」

私の髪に口づけるディオンさんは、この上なく幸せそうな顔をしている。

(ディオンさん……)

けれどこの時、私はまだ彼の中に芽生えている変化に、気づけないでいた…-。

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