月SS 形になる気持ち

漆黒の夜空で、星々が瞬く静かな夜…-。

ダルファー「いい風だな……」

城のバルコニーで空を眺めていた僕は、吹き抜ける風に頬をくすぐられながら、ふいに〇〇ちゃんの顔を思い出した。

ダルファー「今、何してるんだろう。会いたいな。 ……って、あれ?」

自分のつぶやきに、思わず驚きの声を上げてしまう。

(不思議だな……今まで、こんなことなかったのに)

こういう夜に、二人きりで会いたいと言ってくれる女の子はたくさんいたものの、自分から会いに行きたいと思ったのは初めてかもしれない。

ダルファー「この気持ちって、やっぱり……」

―――――

ダルファー『可愛いな。〇〇ちゃん、大好き』

―――――

(あの時の言葉に、嘘はなかったけど……)

(やっぱり、今抱いている気持ちとは少しだけ違う気がする)

ダルファー「もしかして……。 これが本当の恋、ってやつなのかな」

僕は小さくつぶやいた後、深く考え込む。

だけど、ほんの少しの間の後……

ダルファー「……嘘とか本当とか、よくわかんないや」

周りの人達いわく、どうにもこういったことに適当な僕は、すぐに考えることを諦める。

ダルファー「それよりも、〇〇ちゃんの部屋はどこだっけ」

僕は彼女の部屋の場所を思い出しながら、翼を広げた。

そうして、バルコニーの手すりに手をかけた瞬間…-。

(……こんな時間に、女の子の部屋を訪ねるなんて)

(カミロにバレたら、ものすごく怒られるだろうなぁ)

いかにも堅物といった風貌のカミロが、『女性に対して礼儀がなってない!』と怒っている姿が目に浮かぶ。

ダルファー「でも、まあ……会いたいんだから仕方ないよね」

僕はそう言って小さく笑みを浮かべた後、〇〇ちゃんの部屋に向かって羽ばたいたのだった…-。

……

無限に広がる美しい夜空へと、〇〇ちゃんを攫ってからしばらくの後……

〇〇「わぁ……」

腕の中の彼女が、街を見下ろしながら感嘆の声を上げる。

ダルファー「言った通りでしょう?」

〇〇「こんな綺麗な夜景は見たことがありません」

ダルファー「うん。皆、そう言う」

(……っと、今のはちょっとまずかったかな?)

以前、他の女の子に同じ台詞を言って怒らせてしまった時のことが頭を過ぎり、さすがに少し不安になった。

(っていうか……こんなこと気にするの、初めてかも)

(……やっぱり僕、キミのこと大好きになっちゃったんだろうね)

どこかふわふわと定まっていなかった自分の気持ちが、はっきりと形になる。

そして……

(でも、キミにこの景色を見せたかった気持ちに嘘はないから)

ダルファー「だからキミにも見せてあげたかったんだ。一番綺麗な僕の国を、ね」

〇〇「ダルファー……」

僕が嘘偽りのない思いを口にした後、〇〇ちゃんは、冷たい夜風に体を震わせた。

ダルファー「……寒いかな。もう降りようか」

僕はそう言って、彼女を深く抱き直す。

結局、〇〇ちゃんの本心はわからなかったけど……

(きっと、怒ってはないよね?)

自然と僕の胸に顔を寄せてくれた彼女を見て、僕は、どこまでも都合のいいことを思ったのだった…-。

おわり。

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