イルミネーションの光が、華麗に色や形を変えていく…-。
街中を流れるように張り巡らされた光の線が、僕の目を楽しませた。
(大切な人と過ごすクリスマスか……)
(皆がクリスマスを好きな理由が、わかった気がする)
(こんな綺麗な街を〇〇と歩けるだけで、すっげえ楽しいもんな)
ざくざくと雪を踏み鳴らす音がリズムよく聞こえて、気持ちがいい。
ふと彼女の肩越しに、家の窓に飾られたサンタクロースの人形が目に入った。
(サンタか……)
楽しさでいっぱいだった胸に、小さな棘が刺さったような痛みを感じる。
(きっと〇〇は、プレゼントをもらえない僕を気遣って一緒にいてくれてるんだよな)
(お前は、僕を大切な人だって言ってくれたけど……)
その言葉を疑うような気持ちが、一瞬頭をよぎった。
そんな僕に、〇〇が笑顔をくれる。
(そうだ、僕は信じるぜ! お前が素直な気持ちからそう言ってくれたんだって)
僕はかわいい笑顔に応えるように、大きく笑い返した。
(僕はプレゼントなんかもらえなくても、こうやって〇〇と過ごせるだけで充分だ)
(一緒にいられることが、何よりも嬉しい……)
(〇〇がくれたこの時間が、僕にとって一番のプレゼントなんだ!)
彼女への想いを募らせながら、二人で歩いていると……
やがて僕達は、街外れにある広場に足を踏み入れていた。
すると、その時…-。
〇〇「雪……?」
〇〇が見上げた空へ、僕は急いで視線を動かす。
ウェルガー「わあ……!」
空から降ってくる雪に胸が高鳴り、思わず声が出てしまう。
僕はわくわくする気持ちを抑えきれず、両手を広げて走り出した。
ウェルガー「見ろよ、すっげえ綺麗だな!」
〇〇「そんなに走ったら危ないよ」
ウェルガー「へへっ! 大丈夫だよ!」
〇〇の優しい気遣いに、嬉しくなる。
(心配してくれるのは嬉しいけどさ)
ウェルガー「こんな綺麗なのに、じっとしてなんかいられるかって!」
イルミネーションの光によって、雪はいろんな色に変わっていって……
(まるで、イルミネーションと雪のショーを見てるみたいだ)
このわくわく感はアニキ達のショーを見てる時と、よく似ていた。
ウェルガー「ほら、お前も早く来いよ!」
(お前にも、早くこれを見せたい)
(そんな隅っこで見るより、ここで見た方が断然綺麗だから)
〇〇「うん」
そっと盗み見ると、走り回る僕の方へ、少し困ったように笑う〇〇がやって来る。
その瞳は、イルミネーションに負けないくらい輝いていた。
(綺麗だな……)
密かにそんなことを思った、その時…-。
ウェルガー「うわっ!」
〇〇「ウェルガーくん!?」
足を滑らせた瞬間、僕は思わず目をつむる。
するとボスッという音と共に、背中に柔らかい雪の感触が訪れた。
〇〇「ウェルガーくん! 大丈夫?」
(くそ……〇〇の前で転んじまうなんて)
(すげえ格好悪い…-)
目を開けた瞬間、空から舞う雪と僕を見下ろす〇〇の姿が視界に飛び込んできて……
彼女に、雪の粒が光をまとって降り注いでいるように見える。
(こんなの……見たことねえ)
信じられないぐらい綺麗な光景に、悔しさはいつの間にか消えていた。
ウェルガー「この雪って、サンタからのプレゼントかもしれねえな……」
〇〇「え……?」
(〇〇が見せてくれた景色……)
(……お前の優しさが、こんなに綺麗な景色を見せてくれたんだ)
ウェルガー「だって……お前って、今まで出会った誰よりもいい奴だからさ。 だから、こんな綺麗な景色が見られたんだ」
だけどそんな僕の言葉を、〇〇はそっと否定する。
それどころか……
〇〇「この雪は、ウェルガーくんが頑張ったから贈られたんだと思う。 ウェルガーくんは『いい子』だから」
優しい言葉の数々が、まるで雪のように僕の心に積もっていく。
ウェルガー「へへっ。やっぱ、優しいな。お前」
立ち上がった僕は、〇〇を強く抱きしめる。
光と雪が織りなす、僕達だけが見ているショー……
彼女がくれたこの時間は、僕にとって心から嬉しくて幸せなクリスマスプレゼントとなったのだった…-。
おわり