月SS とっておきを貴方に

レストランを出た後、僕達はイルミネーションが瞬くショコラベリィの街を並んで歩く…-。

(そろそろ、いい頃かな……)

コロレ「〇〇さん」

白い息を弾ませながら歩いていた彼女の名前を呼ぶと、つぶらな目が僕を見上げる。

〇〇「はい」

コロレ「実は、〇〇さんにプレゼントを用意したんだ」

少しだけ緊張しながらも、僕はポケットからトランプを取り出す。

〇〇「あの、コロレさん……?」

(大丈夫……練習通りにやれば)

内心ドキドキしていることを悟られないように、僕は広げたトランプを彼女の前に差し出した。

コロレ「この中から一枚選んで……えっと僕に見えないようにカードの数字を確認したら、また戻してくれる? そうしたら、僕がそのカードを当てるから」

〇〇「? はい」

〇〇さんは僕の言う通りに一枚引いて、カードを確認する。

そして戻されたカードと一緒に、僕はトランプを切り始める。

けれど……

コロレ「あっ……」

カードが何枚か地面に落ちて、恥ずかしさに顔が熱くなる。

(失敗しないようにって、あれだけ自分に言い聞かせたのに……)

(どうしよう……上手くいかない)

コロレ「ごめん。何度も練習したんだけど……」

(やっぱり、〇〇さんの前だと緊張しちゃうのかな……)

(ううん、大丈夫。ちゃんと見ててくれてるんだから、頑張らないと……)

その気持ちが功を奏したのか、なんとかトランプの手品を成功させることができた。

(ふう……ここまではよかった。さて、ここからが肝心だよね)

上手くできるだろうかと緊張して、手が震えそうになる。

(でも、絶対に成功させたい。貴方に喜んでほしいから……)

コロレ「じゃあ、最後、とっておきのを披露するね」

ドキドキしながら、僕はハートのエースのカードを掲げ、それに白い布をかける。

(どうか、〇〇さんが喜んでくれますように……)

心の中で念じて、そしてつぶやいた。

コロレ「3、2、1……」

唱えながらぱっと白い布を取り、彼女にブーケを捧げる。

〇〇「……!」

(よかった……上手くいった)

コロレ「メリークリスマス……だったよね? これ、貴方にプレゼント」

(どう……かな?)

彼女を見れば、その顔に喜びの色が広がっていくのがわかる。

〇〇「すごい……!」

〇〇さんはブーケに忍ばせておいた、小さなぬいぐるみに気づいて頬を緩ませる。

〇〇「かわいいですね。 こんなに素敵なプレゼント……ありがとうございます」

そう言って微笑む表情が愛らしくて、いつまでも見ていたくなる。

コロレ「……」

(その笑顔を……大切にしたい)

〇〇「あの……コロレさん?」

首を傾げて見上げられ、僕ははっと我に返った。

コロレ「あ……ううん。貴方があまりにもかわいくて、見とれちゃってた」

(ほんとに……まぶしすぎて)

〇〇「えっ……」

つられるように赤くなった〇〇さんを見つめながら、僕は彼女の手をブーケごとそっと包み込んだ。

コロレ「よかった……喜んでもらえて。 この前サーカスの話をした時、僕も何かできないかなって思って……こっそり練習してたんだ。 大好きな貴方に……特別なプレゼントを贈りたかったから」

胸の内を明かしてしまった照れくささで、笑ってしまう。

〇〇「コロレさん……ありがとうございます。すごく嬉しいです」

(この笑顔……僕は貴方のこの表情が見たかったんだな)

そんなことを思いながら、僕はこれまでのことに想いを馳せていた。

―――――

うっすらと窓から朝日が差し込んでいるのにも気がつかず、僕は何度もマジックの練習を重ねていた。

コロレ『あっ、また失敗。やっぱり難しいな……』

(クリスマス・サーカスのようにいかないのはわかってるけど……)

白い布をカードに被せては、何度も練習を繰り返す。

コロレ『本番、大丈夫かな……』

僕は彼女の笑顔を思い浮かべる。

(いや、絶対に成功させて〇〇さんに喜んでもらうんだ……)

彼女の笑顔を見たい一心で、僕は何度も練習を重ねた…-。

――――――

そして今、〇〇さんが僕に最上級の笑顔を見せてくれている。

僕は彼女の手をそっと取って……

コロレ「行こうか」

〇〇「はい……!」

顔を上げると、イルミネーションの光の洪水が目の前に広がっていた。

僕達は煌めくクリスマスの世界に誘われるように、手を繋ぎながらゆっくりと歩いて行くのだった…-。

おわり。

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