月7話 幸せを感じて

薄く積もった雪が、イルミネーションの光で青白い輝きを帯びている…-。

(綺麗……)

冷たくも澄んだ夜の空気の中、私はアディエルくんと街に繰り出していた。

アディエル「お、あそこには屋台も出てるな」

どこか浮き立った様子のアディエルくんの声に目を向けてみると、そこにはホットチョコレートやホットワインなど、体が温まりそうな飲み物が並んでいた。

アディエル「普通は、新年を迎える頃にこういう小さなマーケットが出たりするんだけどさ。 今の時期に見るのは新鮮だな。 それに……」

アディエルくんは、一瞬だけ迷うように視線を彷徨わせて……

私の手をそっと包み込むように握りしめた。

アディエル「お前と、こんなふうに歩くのも」

照れくさそうにはにかんだアディエルくんの笑顔に、胸が甘い音を立てる。

アディエル「嫌じゃねえか?」

〇〇「はい……もちろん」

アディエル「そっか」

アディエルくんは短くそう返事をすると、握った手に込める力を少しだけ強くし、私の体を引き寄せた。

(あ……)

ふわふわとした感触に身じろぎすると、彼の真っ白な羽が私の背中を覆っていた。

アディエル「……こうしてると、あったかいかなってさ」

〇〇「……そうですね」

空から白い雪が静かに舞い降りる中、彼の温もりを感じられることを幸せに思っていると…-。

??「~♪」

どこかから綺麗な歌声が聞こえ、私達は顔を見合わせる。

すると、親と思われる人と手を繋いだ子ども達が、前の方から歌いながら歩いてきていた。

(あの子達は、楽団の……?)

アディエルくんもそれに気づいたらしく、もう片方の手を挙げて彼らに挨拶をした。

アディエル「おう。今帰りか?」

男の子1「あっ! アディエルさまとお姫さまだ!」

男の子2「そうだよ! お歌の練習のあと、お母さんたちとサーカスに行ってたんだ!」

〇〇「そうなんだ、楽しかった?」

男の子達「うん!!」

無邪気な子ども達に、思わず顔を緩ませると…-。

男の子1「アディエルさまたちは? デート?」

かわいらしく小首を傾げた男の子の質問に、にわかに頬が熱くなってくる。

〇〇「えっと……」

母親「こ、こら。王子様達になんてことを……」

母親が慌てて男の子を諌めようとするけれど、ほんのりと顔を赤く染めたアディエルくんは、手を振ってそれを制して…-。

アディエル「いいって。実際、デートなわけだしさ。 ……って、認めるのもなんか照れるけど」

彼の瞳が、遠慮がちに私の方へ向けられる。

〇〇「……そうですね」

私達はお互いに照れながらも、そのまま見つめ合い、笑い合った。

それから……

アディエル「そういうわけだから、応援してくれよ?」

男の子達「は~い!」

私達に頭を下げた後、彼らは歌を口ずさみながら去っていく。

彼らを見送った後、私達もまた歩き出した。

アディエル「……不思議だな」

いつになく穏やかな声で、アディエルくんがぽつりとつぶやく。

〇〇「アディエルくん……?」

アディエル「オレさ。ずっと、自分は幸せになっちゃ駄目だって思ってた」

〇〇「そんな…―」

アディエル「けど……」

雪明かりに照らされ、アディエルくんの白い羽がほのかに青白く輝く。

(なんて……綺麗なんだろう)

その美しさに、私は言葉も忘れ見入ってしまった。

すると……ふと、アディエルくんが足を止める。

彼の視線の先にあったものは……

(あれは……)

私達が昼間訪れた、あの聖堂だった…-。

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