月7話 神だろうとも

にじり寄るオルガさんの姿に恐怖を感じ、目を閉じたその時…-。

扉が開け放たれ、かすかな怒りを揺らめかせたアヴィが祭壇へと入ってきた。

アヴィ「……そいつを放せ」

〇〇「……アヴィ!」

オルガ「貴殿、どういうつもりだ? これは神託による神聖な儀式。関係の無い者は出て行ってもらおう!」

オルガさんの言葉にも怯まず、アヴィは静かに私の前まで歩みを進めると、穏やかな声で言った。

アヴィ「〇〇、迎えに来た。帰るぞ」

〇〇「……」

真っ直ぐな視線と共に、手が私へと伸ばされる。

私も、手を伸ばそうとするけれど……

アフロスの神官「アルストリアの王子よ。女神の神託に異を唱えてはなりません。 軽はずみな行動を取っては、災いがもたらされるかもしれませんよ」

(もし、この手を取ったら……)

わずかな迷いが胸中に起こり、彼の伸ばそうとしていた指先が止まる。

その一瞬の隙をついて、オルガさんが私とアヴィの間へ入った。

オルガ「……〇〇は僕の妻となる女性だ。 勝手に連れて行くことは許されない。 おい、この邪魔者をさっさと摘まみ出せ!」

兵士「はっ!」

指示が飛ぶや、横に控えていた兵士達がアヴィを取り囲む。

数十本もの槍が一点、アヴィに向けられる。

けれど…-。

アヴィ「……っ!」

耳障りな金属音が響き、槍の束は一気にその場から弾け飛んだ。

見ればその中央には、いつの間に抜いたのか、剣を構えるアヴィの姿がある。

〇〇「アヴィ!?」

オルガ「何をしている! さっさとしろ!」

叱咤の声が飛ぶが、アヴィの神速の太刀筋の前に、兵士達は相手にすらならない。

アヴィ「どうした、もう終わりか? 茶番だな……お前らみたいなのに、そいつは任せられねえよ!」

アヴィが強く言い放つ。

その言葉に呼応するように、祭壇に設えられた水鏡が不穏に揺れ出した。

アフロスの神官「見ろ! 神が……お怒りだ!」

水鏡を見た神官たちに戦慄が走る。

けれどその動揺をものともしないで、アヴィは言い放った。

アヴィ「知るかよ。神だろうがなんだろうが……そいつを泣かせる奴は許さねえ。 かかってこいっ!! 全員まとめて相手してやる!」

〇〇「……アヴィ!」

再び剣を構え、凛と告げられた言葉に、胸が高ぶる。

また涙が目尻からあふれそうになる……

その衝動をぐっと堪え、顔を上げた時だった。

アルストリアの兵士「アヴィ王子! 裏がとれました!!」

〇〇「!?」

振り返ると扉の前には、列を成したアルストリア・アフロスの両兵士に囲まれ、アフロスの国王が立っていた…-。

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