月最終話 君に贈る光

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シュテル『僕は……今まで君にもらってばかりだった。 だから、これからの僕は、君に何ができるだろうかと考えていた』

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その答えを見つけたと言うシュテルさんは、まばゆい笑みを浮かべ……

あらゆる光を受け止めるように、腕をしなやかに広げた。

〇〇「シュテルさん……」

陽の光、それに反射する彼の髪、水面の煌めき、空の青と海の蒼……

それらを背に、シュテルさんは神々しいまでの美しさをまとっていた。

言葉も忘れ見入っていると、シュテルさんの口元がわずかに引き上げられ…-。

シュテル「この世界に溢れる、すべての光を君に」

優しさに満ちた微笑みが、私に向けられた。

〇〇「すべての光……」

シュテル「そう……優しくも儚い星の輝きだけじゃない。 まぶしい陽の光も、淡い月の光も……その光を受けた水面の輝きも」

力強く言葉を紡ぎながら、シュテルさんは星屑時計に視線を落とした。

シュテル「メテオベールの王族の力は使わない。 僕が、この手で見せよう」

〇〇「シュテルさん…-」

感極まったまま、シュテルさんの名前を呼ぶ。

すると…-。

シュテル「もう一度、呼んでほしい。 名前を呼ぶ声が、煌めいて聞こえるのは……君だけだ」

シュテルさんの唇から、甘い響きが漏れる。

〇〇「……シュテルさん」

私は高鳴る鼓動を感じながら、もう一度シュテルさんへの想いを込めた。

次の瞬間…-。

シュテル「……幸せだ」

シュテルさんの青い瞳に愛おしさがにじみ、いっそう美しさが際立った。

シュテル「君が見せてくれるこの幸せな光も……今度は、僕が君に贈るから」

〇〇「……ありがとうございます」

シュテルさんの気持ちが、止めどなく溢れてくる。

私は彼を見つめる眼差しに、想いのすべてを乗せた。

〇〇「私も……シュテルさんを、もっと幸せな気持ちでいっぱいにしたいです。 幸せなシュテルさんの笑顔をたくさん見たい。 シュテルさんがたくさんの人を笑顔にした分……いいえ、それ以上に」

シュテル「〇〇……」

シュテルさんの低い声色に、驚きに似た色が混じる。

〇〇「欲張り……でしょうか」

シュテル「いや」

首を横に振ると、シュテルさんの髪が流れ星のように美しくなびいた。

シュテル「それが君の願いなら」

そんな一瞬さえ美しく、目を奪われていると…-。

シュテル「僕達が贈り合いたいものは、同じものだ」

愛おしそうな声と共に、シュテルさんに抱きすくめられた。

不意のことに胸が大きく音を立てたけれど、同時に安心感が満ちていく。

(シュテルさんの香りがする……)

〇〇「……そうですね」

頷きながら、シュテルさんの背中にそっと手をまわした。

〇〇「こんな日が来るなんて……思いもしませんでした」

シュテル「僕もだ」

シュテルさんがくすりと短く笑い、私の髪を指で梳いた。

シュテル「この命が尽きるまで、誰かの願いを叶え続ける……。 それだけが、僕の願いだったから」

シュテルさんの儚げな声音に、心がぎゅっと締めつけられる。

鼓動を求めるように、私はシュテルさんの胸へ顔を寄せた。

シュテル「だが……別の願いが心に生まれてしまった」

規則的な胸の音に重なって、シュテルさんの声が届けば、遊園地で彼から告げられた、あの言葉が蘇ってくる。

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シュテル『これは僕の願いでもある。いつまでも君の傍にいたいから』

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シュテル「君が、僕を変えた。 君との出会いは、僕にとっての奇跡だ」

抱き合う私とシュテルさんの間で、星屑時計が輝き続ける。

その消えることのない光は、私達を祝福してくれているように見えた。

シュテル「この奇跡に、感謝している。 僕と出会ってくれて、ありがとう。〇〇」

(私も……)

今までとこれからの想いを、言葉に乗せて……

〇〇「私も、シュテルさんと出会えたことが何よりも嬉しいです」

私達は互いの存在を慈しむように、柔らかな口づけを交わす。

シュテル「見つけに行こう。まだ知らない光を。 これから、二人で…-」

二人を包む世界にも、そして心の中にも、美しい光が溢れていた…-。

おわり。

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