月SS 二人を照らす光

ワールドサロンである島に視察に来た僕は、目の前に広がる世界に息を呑んだ。

(言葉にならないとは、こういうことを言うのか)

まぶしい陽の光を抱いた広大な空、その煌めきを反射する雄大な海……

この世界のすべてが、青と光で構成されている。

(星空も美しいけれど、陽光が織りなす景色も美しい)

(〇〇にも見せたい。きっと喜んでくれる)

目を奪われていたその時、風景に彼女の笑顔が重なった。

(それに……この景色には、〇〇のまぶしい笑顔がかならず似合う)

彼女の存在を加えた情景を思い描くと、心の奥底から温もりが広がる。

〇〇とは、後日とある式典で会うことになっている。

彼女と過ごす時間を思うと、知らず胸が騒ぎ出すのだった…-。

……

式典が終わって遊園地で楽しんだ後、僕は彼女をこの場所へ案内した。

(こんなに光が溢れている場所でも、君の笑顔が一番まぶしく見える)

〇〇は、きらきらと輝く澄んだ瞳で景色を眺めている。

(君は、いつだって幸せな光を放つ)

(そうして僕の未来を、ずっと照らし続けてくれた)

誰かの願いを叶えることにしか生きる意味を見いだせなかった、僕の未来を…-。

(だから……今度は、僕の番だ)

僕は、すべての光を受け止めるように腕を広げ…-。

シュテル「この世界に溢れる、すべての光を君に」

そう告げると、〇〇は問いかけるように首を傾げた。

〇〇「すべての光……」

シュテル「そう……優しくも儚い星の輝きだけじゃない。 まぶしい陽の光も、淡い月の光も……その光を受けた水面の煌めきも」

(この世界にある幸せ……そのすべてを君に贈りたい)

僕は、願いを叶えられる星屑時計に視線を落とす。

(これを使えば簡単だ。でも、それでは意味がない)

(君を……悲しませてしまうから)

シュテル「メテオベールの王族の力は使わない。 僕が、この手で見せよう」

(力はまだ足りない。それはわかっている)

(だが……僕は、君のために尽くしたいと思う)

〇〇「シュテルさん…-」

(澄んだ音だ……)

彼女の声が、綺麗な音楽のように僕の心に深く響く。

シュテル「もう一度、呼んでほしい。 名前を呼ぶ声が、煌めいて聞こえるのは……君だけだ」

僕の気持ちが伝わったのか、彼女のかわいらしい唇が動き出す。

〇〇「……シュテルさん」

ひときわ優しい声に包まれ、自然と笑みがこぼれた。

(たったこれだけのことなのに)

シュテル「……幸せだ」

溢れ出す愛おしさのままに、僕は〇〇の瞳を熱く見つめた。

シュテル「君が見せてくれるこの幸せな光も……今度は、僕が君に贈るから」

〇〇「……ありがとうございます」

彼女も、美しく情熱的な眼差しで見つめ返してくれる。

そして、彼女も僕を幸せにしたいと、心のこもった言葉で言ってくれた。

(こんなに幸せで、いいんだろうか)

同じ想いを抱いてくれていた彼女を、僕は強く抱きしめる。

〇〇「こんな日が来るなんて……思いもしませんでした」

シュテル「僕もだ」

(君よりも、僕が一番驚いている)

僕は軽く笑いながら、〇〇の艶やかな髪を指で梳いた。

シュテル「この命が尽きるまで、誰かの願いを叶え続ける……。 それだけが、僕の願いだったから」

彼女が悲しげな表情を隠すように、僕の胸に顔を埋める。

〇〇を安心させたくて、僕は腕にそっと力を込めた。

シュテル「だが……別の願いが心に生まれてしまった」

(いつまででも、君の傍にいたい)

彼女がおもむろに視線を上げる。

その澄んだ瞳は、わずかに潤んでいるように見えた。

(願いが聞こえてしまったかな)

そう考えると、どこか気恥ずかしい。

(君も……こんな気持ちだったのかな)

切ないほどの愛に満ちた、大事な願い…-。

シュテル「君が、僕を変えた」

(誰に何を言われようとも、僕は変わるつもりはなかった)

(だが、君という人は、あっという間に僕の心をさらっていった)

(たった一人との出会いが、こんなにも人生を変えるんだな)

シュテル「君との出会いは、僕にとっての奇跡だ」

抱き合う僕と〇〇の間で、星屑時計が輝いている。

かつては淡く儚げな光だと思っていたけど、今ではまぶしく見えた。

シュテル「この奇跡に、感謝している。 僕と出会ってくれて、ありがとう。〇〇」

(誰もが、誰かの光)

(僕にとっては君が光だ。君にとっても、僕もそうありたい)

(そういられるように、努めよう)

互いの温もりを愛おしく思いながら、穏やかな口づけを交わし合う。

二人が歩いていく未来を祝福するように、あらゆる光が一斉に煌めいていた…-。

おわり。

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