月8話 民の寝返り

城で襲撃を受けたアポロと私は、二人で城から逃げ延びた…ー。

向かうは街しかなく、力を使い意識が朦朧とし始めたアポロを支え、私は助けを求めた……

○○「すみません! どなたか……どなたか手を貸してください!」

けれど……

国民「お、おい……あれは、アポロ様じゃ……」

国民「アポロ王子……アポロ王子だーっ!!」

(え……?)

街の中は一気にどよめきを広げ、不穏な空気が広がる。

背筋が、冷たくなるのを感じた。

兵士「こっちだーっ! こっちにアポロ様がいるぞー!!」

アポロ「……街の連中まで……抱き込んだとは……」

○○「え……?」

アポロ「父と兄だ……。 ここ最近の力の使いすぎや遠征で。俺が弱っているところを狙っていたのだろう……」

○○「そんな…ー」

アポロ「……くそっ!」

すぐに……ぼっ、とアポロの手の上に炎が揺らぐ。

○○「アポロ……!」

アポロ「っ……ああああああ!!!」

アポロの叫びが天高く響き、激しい炎がその場を焼いた。

○○「いけない……! これ以上力を使ったら……!」

私の声が届いていないかのように、アポロの炎は激しさを増す。

アポロ「くそ……っ!」

皆が足止めを食らっているその間に、アポロに手を引かれてその場を立ち去ったのだった。

……

私達は、誰にも見つからない場所を探して、領の外れの洞窟まで逃げ延びた。

到着すると、すぐにアポロは力尽きるように気を失ってしまった……


……

それから数日に渡り、アポロは痛みと苦しみにうなされ続けた。

私はただアポロの世話をすることしかできずに、日々を過ごした。

そんなある日……

アポロ「……○○……」

○○「アポロ……!」

連日うなされ続けたアポロが、やっと目を覚ましてくれた。

アポロ「……随分……眠っていたようだ」

○○「はい、でもたった数日です」

アポロ「数日……そうか」

アポロがゆっくりと上体を起こす。

その背に手を添え、私は起き上がるのを手伝った。

(冷たい……)

熱い炎を宿すその体は、今はとても冷えきっていて……私の心を苦しくさせた。

○○「ここへ逃げ込んですぐに、アポロの側近の方が来られました。」

アポロ「何!? 何かされなかったか!?」

○○「大丈夫です。アポロの味方です」

アポロ「そう、か……」

アポロが、安堵と悲しみとも取れる深いため息をこぼした。

アポロ「それで、何か言っていたか」

○○「城と国の状況を教えてくれています。恐らく、アポロの予想通りで……」

アポロ「城は征服され、国は最悪な状況か」

○○「……はい」

アポロ「……」

アポロが苦々しげに、眉をひそめる。

アポロ「まさか……民達まで寝返るとは思っていなかった。 俺は……俺のやり方は、間違っていたのか……? 絶対的な力で導くことこしが、王として正しい姿ではないのか……?」

○○「アポロ……」

哀しげにつぶやかれる言葉に、胸が締めつけられた時…―。

側近「アポロ様……!?」

アポロの側近の方がやってきた。

側近「お目覚めになられたのですね! ああ、よかった……!」

アポロ「ふん……。 貴様、阿呆な男だ。もう少し賢い奴かと思ったが」

○○「アポロ……?」

憎まれ口を叩く姿を、不思議に思っていると……

アポロ「貴様も兄や父に寝返ればよかったのだ。そうすれば、相応の身分も保証されただろう」

側近「そんな、私は……私のお仕えするお方は、アポロ様以外におりません!」

アポロ「……」

深くかしずく側近の姿から目を逸らしながら、アポロが鼻で笑う。

その顔は、わずかに微笑んでいた。

(よかった……)

ほっとしたのも束の間、その日告げられた戦況に、アポロは息を呑んだ。

アポロ「なんだと……」

話によると、先日アポロが制した自治領が再び反旗をひるがえし、城に攻め入ろうとしているらしい。

アポロ「……無能だ。俺がいないと、抑えることすらできんのか」

側近「私は再度、状況を確認して参ります……どうか、ご自愛を」

側近の方が立ち去った後……アポロは苦々しくつぶやいた。

アポロ「……なかなか戦に長けた軍であった。あの阿呆共では、落とされてしまうだろう。 俺は……」

○○「……!」

アポロの瞳に、炎が静かに揺らめいた気がした。

アポロ「……まだ、俺はあの領土の王だ。 王とは、いついかなる時も、国と民を守るもの……」

○○「アポロ……じゃあ、戦場に行くんですか?」

アポロ「……俺の国だ。俺が守らずして、誰が守る」

何も言えずに、じっとアポロを見つめていると……

○○「っ……」

激しく奪うように、唇が重ねられた。

(アポロ……?)

悲しみをつけるような、そして秘めた想いをぶつけるような……

強引で荒々しい、アポロそのもののような口づけ……

○○「ん……っ」

深く激しく、幾度も唇を重ね合った後に……アポロは私を、きつく抱きしめた。

○○「……アポロ……?」

アポロ「お前が好きだ……」

○○「っ……!」

アポロ「お前がいなければ、もっと早くに……俺は駄目になっていただろう。 今夜は……傍にいろ」

その逞しい体に、きつく私を抱きしめたまま、アポロは切なく訴えた。

(どうしたの……? まるで何か、怖がっているみたい……)

私もアポロの背にそっと手を回し、その晩は寄り添って眠りに就いたのだった…ー。

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