月SS 永遠の愛を捧ぐ

夕陽が差し込む廊下を、〇〇と並んで歩いていた時…-。

ヴァイリー「……っ!」

ざわりと全身が総毛立ち、オレは思わず膝をついた。

(これ……は…-)

鼓動が急に速くなる。

心が暗闇に飲み込まれていくような、恐ろしい感覚…-。

〇〇「ヴァイリーさん!?」

(駄目だ……!)

ヴァイリー「……心配しすぎだ。ちょっと疲れただけだって」

不安そうな彼女に、平静を装いながら笑いかける。

ヴァイリー「……もう大丈夫だ。じゃあオレは、自分の部屋に戻るから。オマエもゆっくり休めよ」

〇〇「でも……」

彼女はなお、オレのことを心配そうに見つめている。

(これ以上、心配かけられねえ……)

ヴァイリー「じゃあな」

申し訳なさを募らせながらも、オレはさっと〇〇に背を向けたのだった…-。

……

部屋に入ると、体から一気に力が抜け、ドアに背をつけてずるずると座り込んでしまう。

ヴァイリー「くそっ……」

獣化の呪いが、起きかかっている。

覚悟したはずなのに……〇〇と離れることがどうしようもなく怖かった。

ヴァイリー「……」

震える拳で強く床を叩く。

(けど……駄目なんだ)

(アイツに悲しい思いをさせるワケにはいかねえだろ……!)

(なのに…-)

虚勢を張ったのは自分なのに、今ここに彼女がいないことが切ない。

(〇〇……)

彼女の優しい笑顔を思い浮かべながら、オレは力なく目をつむった…-。

……

ドアが叩かれて顔を上げると、辺りはすっかり夜だった。

〇〇「ヴァイリーさん……」

ドアが開けると、〇〇が不安げな顔を覗かせる。

その表情を見て、胸に鈍い痛みが走った。

ヴァイリー「不安そうな顔だな」

〇〇「はい。心配なんです……」

ヴァイリー「本当に、ちょっと疲れただけだって言ってるだろ」

〇〇「ヴァイリーさん……ごめんなさい。でも」

いたたまれなさでいっぱいになり、オレは彼女の頭を撫でた。

すると…-。

〇〇「どこか……焦っているように見えてしまって」

小さくつぶやかれた言葉に、一瞬言葉を失う。

ヴァイリー「……まあ、焦ってないとは言えねえけど」

(けど…-)

焦燥感に支配されていく中で、一つだけ……オレの中に灯る温かな感情があった。

ヴァイリー「でも、オマエが近くにいると不思議と心が安らぐんだ」

〇〇「ヴァイリーさん、私……」

ヴァイリー「だからって……オマエの未来を、オレのために使わせるワケにはいかねえだろ?」

〇〇「っ……」

(だから……いいんだ)

(オマエにこうして会えただけで、オレはもう…-)

〇〇「どうしてですか……!」

不意に〇〇が、オレに詰め寄る。

微かに漂う甘い香りと、泣きそうに歪められた目元に、胸が絞られた。

ヴァイリー「真実の愛で呪いは解ける……そう伝えられてるのは知ってるんだ。 でも……それは絶対なのか? 真実の愛なんて、そんな不確かなものにすがれねえよ」

〇〇「でも……っ!」

(それ以上言うな……!!)

(本当は、オレだって…-)

気づいた時には、遅かった。

オレは彼女の体を引き寄せ、抱きしめていた。

ヴァイリー「それに……呪いが解けるとか解けないとか、そんなことよりもオレは……。 ただオマエと一緒にいたい。そう強く、思うんだ。 オマエと一緒にいると、オレはどんどんオマエのことが好きになって、離したくなくなって…-。 オマエの愛が、オレのものならって……願ってしまう」

〇〇「ヴァイリーさん……」

(ああ……言っちまった)

自分の身勝手さを悔やんだ、その時……

〇〇「願わなくたって……私の愛は、ヴァイリーさんのものです」

彼女の曇りない瞳が、まっすぐにオレを射抜く。

ヴァイリー「〇〇……」

いつだって、彼女はオレに気持ちをぶつけてくれる。

その強さがありがたくて……愛おしかった。

(オレは……意気地なしだな)

オレは決意を固め、口を開く。

ヴァイリー「オレはこれから今までより、オマエに辛い思いをさせてしまうかもしれない。 それでも一緒にいてくれるか?」

(オマエが望んでくれるなら……オレはもう迷わない)

〇〇「もちろんです。私もヴァイリーさんの傍にいたい。 そして、私の想いで……ヴァイリーさんの呪いを解きたい」

彼女が一輪の花をオレに差し出す。

(誓いの花……オレのために、持ってきてくれたのか)

美しく白い花は清廉で、まるで彼女のようだと思った。

ヴァイリー「誓いの花、か。愛を誓うと、白い花が赤く染まる……」

花びらにそっと触れた時…-。

〇〇「あ……」

白い花びらが、ゆっくりと赤く染まった。

ヴァイリー「こんな……ことが…-」

小さな花が見せた奇跡に、オレはただ息を呑む。

(〇〇とオレの愛……)

確証なんてどこにもない

けど、これがきっと真実の愛なんだと……オレはそう信じていた。

ヴァイリー「この赤い花を……オマエに捧げる。 ……オマエの愛に、応えさせてくれ」

オレの言葉にしっかりと頷く、愛しい人を見つめ……

彼女に、永遠に続く愛を捧げたのだった…-。

おわり。

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