第1話 物の怪神楽

こよみの国・九曜 輝の月…ー。

この時期、こよみの国には物の怪が通ると言われている…ー。

古くから伝わる物の怪神楽という行事に招待され、私はこよみの国を訪れていた。

妖怪に扮して演舞を披露することで、物の怪達に人と気づかせず素通りしてもらうという風習らしい。

(カノトさん、元気かな)

その演目を観に来て欲しいとカノトさんに誘われて、私は彼の城へとやってきていた。

??「◯◯」

声をかけられ振り返ると、カノトさんがのんびりとこちらに歩み寄って来る。

美しく整った顔には、いつものように穏やかな表情を浮かべているけれど……

◯◯「その格好は……?」

今日のカノトさんは、不思議な格好をしていた。

カノト「これ? 物の怪神楽の衣装」

◯◯「物の怪……」

(昔話とかで聞いたことがあるけど……)

◯◯「物の怪は、怖い存在なんですか?」

カノト「いい物の怪、悪い物の怪、どっちもいる……みたい。 悪い物の怪、悪さする。そうならないように、神楽がある」

カノトさんが、私の顔を覗き込む。

カノト「怖い?」

◯◯「はい。少しだけ……」

カノト「……◯◯が怖い思いしないように、傍にいる」

その瞳には、決意のようなものが宿っている。

◯◯「ありがとうございます」

カノト「うん」

カノトさんがどこか恥ずかしそうに微笑む。

カノト「公務、がんばる。 皆と演目できるの、嬉しい。 たくさんの人が観に来てくれる……楽しみ」

(そうか。カノトさんは……)

国王様は王妃様を亡くされて以来、カノトさんをとてもかわいがっているらしく……

彼は、これまでほとんど城から出ずに過ごしていたという。

◯◯「はい、応援しています」

そう言うと、カノトさんは嬉しそうに笑って、私の手を取った。

少しひんやりとした小さな手に引き寄せられて、私も自然と頬が火照るような心地がした。

カノト「長旅で疲れたよね? 僕の部屋、行こう?」

◯◯「はい」

しなやかで柔らかいカノトさんの手をそっと握り返し……

私は彼の部屋へと向かった…ー。

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