第2話 白葉の舞

物の怪衣装を身にまとった白葉さんは、いつも異常に妖美を漂わせている。

○○「天狗……」

私は、その姿をまじまじと見つめてしまった。

白葉「何よ、○○。あたしに見とれているの?」

○○「はい……白葉さん、その衣装すごくお似合いです」

白葉「ふふ、ありがと。あんたのそういう素直なところ、好きよ」

(好きって……)

白葉さんの歯に衣着せない言い方に、思わず頬が熱くなっていく。

白葉「赤くなっちゃって……かわいい子ね」

白葉さんは目を細めて笑うと、私の頬にそっと手を添えた。

(白葉さん……)

白葉「これから、こよみの国の人達と合同で練習をするのよ」

○○「白葉さんは、天狗を演じるんですか?」

私の問いに、白葉さんは含んだように微笑む。

白葉「そうよ。見てなさい、とても美しいんだから」

妖艶な彼の微笑みからは、揺るぎない自信がみなぎっていた。

……

しばらくして、暦の国と白葉さんの国の人達との、合同の練習が始まった…―。

白葉「こよみの山に天狗降り立ち」

白葉さんの低い声が響き渡ると、その場は張りつめた空気に支配される。

白葉「月光届かぬ宵闇で 音をしのび影を踏む」

全身全霊で演じている白葉さんの姿に、私は釘づけになってしまった。

白葉「漆黒の翼 闇隠れ 邪曲なることありも気づかぬ」

(これが、天狗……?)

目の前にいるのは白葉さんのはずなのに、

その存在感はこの世の物とは思えないほど、なまめかしい美しさを放っていた。

(白葉さん……すごい)

その迫力は、少し怖いほどで……

練習が休憩に入ってもなお、私の心臓はドキドキと高鳴ったままだった。

私の心中を察したのか、白葉さんは目が合うとウインクをして微笑んだ。

(あっ……いつもの白葉さんだ)

白葉「あんたは知ってるかしら?天狗って物の怪はね……。 鼻が高くて、大きな翼があって。夜に現れて人を攫っちゃうんだって」

○○「人を……」

想像しただけで、思わず体が震えてしまう。

白葉「大丈夫よ、そうならないようにこの物の怪神楽を演じるんだから」

○○「はい……白葉さんがいるなら、安心ですね」

ほっと胸を撫で下ろしていると、白葉さんがくすりと笑った。

白葉「あたしが演じるのは鴉天狗よ。武にも秀でてる、とっても強い天狗。 強く気高く美しく……あたしの信条通りよ。演じられて嬉しいわ。 ……でも」

白葉さんは練習をしている演者さん達をじっと見つめる。

○○「どうしたんですか?」

白葉「全体の動きが、まだしっくりこないのよね」

(皆、美しく演じられている気がするけど……)

(確かに、白葉さんと比べちゃうと少しぎこちないかな?)

白葉「美しさを提供するには、たくさん練習が必要ね」

白葉さんはふわりと衣装をひるがえし、再び練習を始める。

(強くて、気高くて、美しい……)

それは、白葉さんにぴったりな言葉だった…―。

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