第5話 力への迷い

沈みかけた太陽が、空を橙色に染めている…―。

その光景をぼんやり眺め、ユリウスさんが小さく息を吐いた。

(ユリウスさんどうしたんだろう……)

苦しげな横顔をじっと見つめていると、ユリウスさんが私に視線を移す。

ユリウス「……ごめんな」

心配する私の気持ちを察したように、ユリウスさんが苦笑をこぼす。

○○「いえ……ユリウスさんが気になっているのって、あの武器のことですか?」

ユリウス「ああ。ちょっと思うところがあって……。 あの大剣は、今回は闘技用に魔力は抑えてある。 でも……これから武器の力が人間の手に負えるものではなくなっていくんじゃないかって思えて戦場という場所が、武器を暴走させちまうからな……」

彼の鋭い瞳は、遥か向こうを睨んでいるようで…―。

(そっか。ユリウスさんも自分の国の戦場で戦っていたことがあるんだよね……)

彼の過去を思い、私はその苦しげな横顔を見つめることしかできない。

ユリウス「アースガルズでは危険なモンスターから国を守るために武器が発達したのは知ってる。 人に向けられたものではないってことも……」

手すりに乗せられたユリウスさんの拳が、きつく握りしめられる。

私は思わず、その拳にそっと手のひらを重ねていた。

○○「そのために、ユリウスさんがいるんじゃないでしょうか」

ユリウス「……え?」

こちらを向いたユリウスさんの目が見開かれる。

○○「戦争を経験しているユリウスさんだからこそ、見えるものがある……伝えられることがある。 ……私はそう思います」

ユリウス「……」

○○「もちろん、皆も」

鋭い光を宿していたユリウスさんの瞳から、緊張が解けていく。

ユリウス「そうだな……イリアやミヤ、トールがこの武器を生み出すために、充分に考えてないとは思わない。 まずは、この国の皆が晒されている脅威に対応できる力だってことを示すことが大切……か」

○○「はい」

ユリウス「オレがこの武器を扱えると思ったから、呼ばれたんだろうしな」

重ねた手に、自然と力がこもる。

○○「試合、楽しみにしています。応援しますね」

ユリウス「……」

重ねていた手のひらがひるがえって…―。

彼の手が、そっと私の手を包み込んだ。

○○「……っ」

ユリウス「お前の前で、無様な姿は見せられねえからな」

○○「え……」

ユリウス「戻ろう」

ユリウスさんは私の手を握ったまま、パーティーホールへと歩き出す。
彼の骨ばった手はとても大きくて……

前を見て歩く彼の横顔には、力強い闘志が宿っているように見えた…―。

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