第2話 怪盗の修行?

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アルマリ「今夜、お前を奪いに行く」

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アルマリに壁まで追い詰められた私は、逃げ場を失っていた…-。

(お前……!?それに奪うって……?)

(アルマリ……いったい、どうしちゃったの?)

いつもと違う強引な彼に戸惑いつつも、それを振り切ることができずにいたその時だった。

アルマリ「ええと……ここからどうすればいいんだっけ……?」

(え……?)

壁に押しつけていた手を離し、アルマリは机の上に置いてある本を手に取る。

(……『ハート泥棒☆ミラクルヴィーナス』?)

よく見ると彼が手にした本は表紙にかわいらしい女の子が描かれた少女漫画だった。

アルマリ「慣れないことをするのって、難しいな……」

漫画をぱらぱらとめくりながら、アルマリがつぶやいている。

○○「アルマリ、それは……?」

アルマリ「え……この漫画?トルマリにこれを参考にしてって言われたんだ」

首を傾げる私に向けて、アルマリがふわりと微笑む。

アルマリ「ちょっと前にティーガが『ティーガ探偵団』を立ち上げたんだ」

(『ティーガ探偵団』?)

宝石の国・ガルティナの王子であるティーガ君の明るい笑顔が脳裏に浮かぶ。

アルマリ「ティーガ達、すごく楽しそうだったから……トルマリが羨ましがちゃって」

トルマリはアルマリの双子のお兄さんで、物静かなアルマリとは反対に、明るく積極的な性格をしている。

アルマリ「トトリさんに相談したら『では彼らが探偵なら、わたし達は怪盗になりましょうか』って……」

○○「怪盗……!?」

アルマリ「びっくりするよね……トトリさんが、やる気になるなんて」

(確かに……)

トトリさんは宝石の国・トリアールの王子で……

私は、穏やかに微笑む彼の姿を思い出していた。

アルマリ「それで、『トトリ怪盗団』を結成したんだけど……。 トルマリに怪盗団の一員としてこの漫画を読んで修行するようにって言われたんだ」

(少女漫画で怪盗の修行って……)

○○「ちょっと面白そうだね」

アルマリ「うん。これで僕が怪盗らしくなれたらいいんだけど……」

アルマリは手にした漫画を閉じると、小さくため息を吐く。

アルマリ「何回やっても上手くいかないんだ……」

(何回もってことは……さっきみたいなことを、他の人にもしたのかな?)

いつもより少し男らしい彼が、他の女性を壁に追い詰めている姿を想像すると……

胸が、なぜかちくりと痛くなる。

○○「……ねえ、他の人にもさっきみたいなことをしてみたの?」

複雑な気持ちになり、私は思わずアルマリに尋ねてみた。

アルマリ「うん。さっき、執事に同じことをしてみたんだ。 でも、笑われちゃって……」

○○「執事さんに?」

(そうだったんだ……)

部屋の隅でにこやかな笑みを浮かべている執事さんと目が合い、心がざわめいたことが少し恥ずかしくなる。

アルマリ「だから、君に助けてもらいたくて……君は僕の知らないことも、たくさん知ってるし……。 それに、久しぶりに会いたいなって思ったから」

○○「……!」

まっすぐな言葉とまなざしが、私の鼓動を大きく跳ねさせた。

(怪盗のための修行なんて、何をすればいいか私にもよくわからないけど……)

(少しでも役に立てればいいな)

鼓動を落ち着かせた後、私は戸惑いながらも小さく頷く。

こうして、アルマリの修行は幕を開けたのだった…-。

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