第5話 開花の儀式に向けて

温泉に足をひたし、私達は身も心もすっかりと温まった。

桜花「やはり、ここに来れてよかった・・・・○○さん、ありがとうございます。 これで、開花の儀式に向けて万全の準備ができそうです」

(桜花さん、すっかり元気になったみたい)

(よかった)

そっと目を閉じて、開花の儀式に臨む桜花さんを想像してみる。

桜花さんがふわりと舞うと、薄紅色の桜の花びらが空を舞う。

その中に、桜花さんがたたずんでいて・・・・ー。

(きっと、綺麗なんだろうな・・・・)

まぶたを開けると、桜花さんと視線がぶつかった。

桜花「どうされたんですか?」

○○「開花の儀式をされている、桜花さんを想像してしまいました。 きっと、すごく綺麗だろうなって思いまして・・・・」

桜花「期待していただけて、嬉しいです」

○○「開花の儀式、楽しみにしています」

桜花「○○さんに、素敵な桜を見せられるように頑張ります」

不意に、桜花さんの表情が硬く引きしめられる。

(こんな表情の桜花さん・・・・初めて見た)

桜花「開花の儀式は、一年の中で一番大切な行事ですからね。しっかりと役目を務めなければいけません」

ぽつりとそうつぶやいた後、桜花さんはいつもの柔らかな笑顔へと戻った。

桜花「あなたと一緒だから、この場所へと来ることができました。 だから、開花の儀式も無事、行えると思います」

(そう思ってもらえるだけで、嬉しいな・・・・)

気がつくと、すでに陽が傾き始めていた。

桜花「楽しい時間は早いですね。そろそろ城へと戻りましょう」

私達が帰ろうとした時、番頭さんが声をかけてくれた。

番頭「帰る前に、よければ隣の山に寄るといいですよ。滋養豊かな薬草が生えていますから」

(薬草・・・・)

番頭「ハートの形をした珍しいものだから、すぐにわかると思いますよ」

私達は番頭さんにお礼を言い、隣の山に寄ってから城へ戻ることにした。

ハート形の薬草を探しながら、私達は山道を歩き続ける。

(雪が解けたばかりだからかな・・・・道がぬかるんでいて、歩きにくい)

陽は傾き始め、頬を撫でる風も冷たくなってきていた。

(早く見つけないと・・・・)

(桜花さん、せっかく温まっていたのに)

気持ちが焦り始めた頃・・・・ー。

桜花「あれは・・・・」

少し離れた木の根元に、ハート形の草が生えているのを見つけた。

○○「私、採ってきます」

急いで駆けて行き、薬草を摘んだけれど・・・・

桜花「○○さん! 待ってください・・・・!」

○○「・・・・!!」

ぬかるみに足を取られて、私の体がふわりと宙に浮き上がった。

桜花「○○さん!」

(桜花さん・・・・!)

彼の必死な表情が、まぶたに焼きついた・・・・ー。

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