第4話 美しい波

春の訪れを少しずつ感じながら、私と桜花さんは歩き続ける。

そしてついに・・・・

(ここだ・・・・)

私達は、体にいい温泉があるという渓谷にたどり着いた。

○○「桜花さん、やっと着きましたね」

桜花「・・・・そうですね」

桜花さんの顔色が、少しだけ青ざめている。

○○「桜花さん、大丈夫ですか?」

(たくさん歩いたし、桜花さん・・・・もしかして、無理をしているんじゃ・・・・)

桜花「・・・・ええ、大丈夫です」

(早く温泉に・・・・)

そう思い辺りを見回すと、少し離れた場所に、もくもくと湯気が立ち込める一帯を見つけた。

○○「きっとあの場所ですね。桜花さん、もう少しなので・・・・」

桜花「はい・・・・大丈夫です。行きましょう」

私と桜花さんは、湯気の立ち込める場所へと急ぐ。

すると、そこには作務衣を着た番頭さんが立っていた。

番頭「はい、いらっしゃい。女性二名だね!」

○○「えっ・・・・!?」

(・・・・女性二名?)

番頭さんの視線は、確実に私達に向けられている。

(もしかして、桜花さんを女性だって思ってる・・・・!?)

(どうしよう桜花さん、なんて思って・・・・)

桜花「・・・・」

桜花さんは、ずっと黙ったままだった。

(ものすごく言い出しづらい雰囲気だけど・・・・)

○○「あの、番頭さん・・・・」

桜花「○○さん、私なら大丈夫ですよ」

桜花さんの声を聞いて、番頭さんが驚いた顔をする。

番頭「・・・・もしかして、あなたは桜花王子・・・・?」

桜花「はい、そうです」

にっこりと笑顔を浮かべる桜花さんを見て、番頭さんの顔がさあっと青ざめる。

番頭「そ、それは大変失礼いたしました! 田舎でずっとこの湯を守ってたもので・・・・! 桜花王子にこんなところまで、ご足労いただいた上、とんだご無礼を・・・・」

何度も謝る番頭さんに、桜花さんは優しく、困ったように笑いかける。

(でも、番頭さんが間違えてしまうのもわかる・・・・)

端正な顔立ちだけではなく、透き通るような肌、柔らかな表情・・・・

(私よりもずっと繊細だから・・・・)

桜花「女性に間違えられてしまいました」

温泉の場所へと向かいながら、桜花さんはなんでもないことのように話す。

○○「あの、きっと・・・・番頭さんが間違えたのは、桜花さんが女性よりも綺麗だからだと思います」

(・・・・って、男性に綺麗って失礼かな)

桜花「あなたの方がお綺麗ですよ」

○○「えっ、あの、そんなことは・・・・」

桜花「あなたは本当に謙虚な方ですね」

(桜花さんは、いつもまっすぐに言葉をくれる・・・・)

私を見つめる彼の瞳があまりに綺麗で、私は返す言葉が見つからなかった。

・・・・

・・・・・・

体にいい温泉は小さな湖ほどの大きさで、人々は周囲に腰をかけて湯の中に足を入れていた。

私と桜花さんも、横並びになって座って足を湯の中に入れる。

(温かい・・・・)

つま先から、温かさがじんわりと広がっていく。

桜花「・・・・体が温まりますね」

○○「はい・・・・気持ちいいです」

その心地よさに、思わずため息を吐く。

桜花「これで、いい春を迎えられそうです」

(桜花さんの顔色がよくなっている気がする)

(やっぱり、ここに来てよかった)

ほんのりと薄紅色に染まった彼の頬を見ながら、

心の奥に、一足早い春が訪れたような気がした・・・・ー。

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