第3話 イルカの恋人達

アンキュラに招待された私は、マルタンさんのクルーザーの上で、彼のおもてなしを受けている。

フルーツブランデーの味と、マルタンさんの醸し出す大人の色気に酔ってしまいそうだと感じながら…-。

マルタン「それにしてもいい風だねえ」

風に向かい顔を上げているマルタンさんの姿に見とれていたら、優しい微笑みで見つめ返された。

マルタン「そうだ、こっちへおいで」

マルタンさんは、さりげなく私の肩に手を回すと、エスコートするように船首へ導いてくれた。

マルタン「普通の人は立ち入り禁止なんだけどね。君は特別」

そう言ってデッキに寄り掛かったマルタンさんが、海を振り返る。

マルタン「っと。ほら、見てごらん」

マルタンさんが指し示す方に視線を向ければ……

○○「わあ……」

青く透明な海の中、二頭のイルカが跳ねながら近づいてくるのが見える。

私は思わず歓声を上げた。

マルタン「ははっ、運がいいね。 姿を見せてくれない時は、何時間待っても全然駄目なんだけどね」

○○「そうなんですね……! あ、また跳ねた。イルカってすごくかわいいですね」

マルタン「俺からしたら、無邪気にはしゃぐ○○ちゃんの方がずっとかわいいよ」

○○「! ……そ、そんな急に……」

マルタン「ごめんごめん。いつも君のことかわいくて仕方ないと思っているから、ついポロッと出ちゃうんだよ」

○○「……マルタンさん……」

頬が火照っているのがわかる。

(マルタンさんといると、ドキドキしっぱなしだよ……)

私は熱くなった頬を冷まそうと、手すりに身を乗り出した。

イルカ達は、私のことを認識しているかのように、絶え間なくジャンプを披露してくれている。

○○「ほんとに素敵……」

マルタン「あんまりはしゃいで、落ちないようにね」

くすくす笑ったマルタンさんが、背後から私を閉じ込めるような形で、手すりに両手を添えた。

○○「マルタンさん……」

マルタン「無防備だね。そんなふうにうつむくと、綺麗なうなじが俺の視線に晒されちゃうよ」

私は緊張と恥ずかしさから、マルタンさんの腕の中で微かに震えた。

マルタン「こうされるの、嫌……?」

耳元に甘く囁きかけられ、思わず肩をすくめる。

○○「嫌じゃないけど……ドキドキしすぎて上手く息ができません……」

マルタン「ごめんね。君に無理をさせるつもりはないんだ。 ちゃんと○○ちゃんのペースに合わせるよ」

優しく髪を撫でながら、マルタンさんがそう言ってくれる。

私は少しホッとしながら、ようやく強張っていた体から力が抜けた。

そんな私を後ろから抱きすくめたマルタンさんが、イルカ達を見てつぶやく。

マルタン「あの子達も、つがいかな?」

○○「仲が良さそうに寄り添っているから、きっと恋人同士ですね」

マルタン「だったら、俺達も見せつけないとね」

○○「イ、イルカにですか……?」

マルタン「ははっ……真っ赤だよ。 でも誰彼かまわず見せつけたいんだ。君が俺の大切な人だってね」

せっかく少しだけ落ち着いた心臓の音が、また激しさを増してしまうのだった…-。

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