第2話 フルーツブランデー

アンキュラへ招待してくれたマルタンさんは、なんと豪華なクルーザーで私を迎えに現れたのだった…-。

マルタン「さあ、○○ちゃん。こっちへおいで」

そう言って差し出された手を掴み、私もクルーザーに乗船する。

マルタン「ようこそマリン・ピスコ号へ、プリンセス」

マルタンさんは恭しくお辞儀をして、私を船内へと招き入れた。

○○「なんだか緊張しちゃいます。こんなの初めてで……」

マルタン「○○ちゃんの初めてに遭遇できたなんて、俺はついてるな。 でも大丈夫。君の緊張はちゃんと俺が解いてあげるからね」

そう言って、マルタンさんは私を甲板に置かれた柔らかいソファーに座らせた。

頬に当たる心地よい風に吹かれながら、きらきらと輝く海を眺める。

(船上から眺めると、海の色がいっそう濃くなるんだ……綺麗)

マルタン「気に入ったかい? 俺の船」

○○「はい。船から眺める海って素敵ですね」

マルタン「君を喜ばせることができてよかった。 さ、今から始まる夢のパーティの、ウェルカムドリンクだよ」

グラスを手渡しながら、中身はフルーツブランデーだとマルタンさんが教えてくれる。

マルタン「この辺りの島で採れた葡萄で作ったブランデーだよ。飲みやすいから大丈夫」

○○「フルーツブランデー……おいしそうです」

マルタン「じゃあ俺達の再会に乾杯ってことで」

私達はグラスとグラスを触れ合わせ、今日の日のことを祝った。

フルーツブランデーは、マルタンさんが言った通り、甘くて爽やかな味をしていた。

マルタン「どうだい? 嫌いな味じゃなかった?」

○○「本当にとっても飲みやすいです」

マルタン「夏の海に似合う、爽やかだけど優しい味わいのお酒だろう? まるで君みたいな、ね」

○○「え……!」

私が驚きの声を上げたのとちょうど同じタイミングで、船が高波によって突然揺れた。

○○「っ……」

マルタン「おっと」

バランスを崩しかけた私の腰を、マルタンさんがさりげなく支えてくれる。

○○「あ……ありがとうございます……」

マルタン「どういたしまして」

つい意識してしまう私とは裏腹に、マルタンさんはあっさり私から手を離した。

(あ……)

その自然な所作は、やっぱり大人びていて……

(マルタンさんから見たら、私はまだ子どもなのかな……)

マルタン「船酔いは、大丈夫かい?」

まるで私の気持ちを見越したかのように、尋ねながらマルタンさんが瞳を覗き込む。

(なんだか……ちょっと悔しいな)

私の胸には、淡い恋の期待がくすぶるのだった…-。

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