第3話 策謀

その夜・・・―。

城に案内された私は、国王様の熱烈な歓迎を受けていた。

国王「これはこれはトロイメアの姫君! 息子を助けてくださり、本当になんと言っていいか・・・!」

とても恐縮した様子の国王様に、私は慌てて胸の前で手を振った。

〇〇「いえ、国王様」

国王「言祝、しっかり〇〇様をご案内するんだぞ」

国王様は、言祝さんに、イタズラっぽい眼差しを向ける。

国王「お美しいからといってうつつを抜かすんじゃない」

言祝「はい、父上」

苦笑する言祝さんと私を残して、国王様は公務に戻られた。

〇〇「気さくなお方なのですね」

言祝「・・・」

そう言うと、言祝さんの表情が強張った。

〇〇「どうかしましたか?」

言祝さんはハッとすると、慌てて顔に笑顔を貼りつけた。

言祝「ごめん、なんでもないよ・・・さあ、部屋に案内するよ」

微笑みを貼りつけてそう答えると、私を部屋へと案内してくれた。

言祝「ここが〇〇の部屋だよ」

〇〇「ありがとうございます」

先ほどの彼の表情が気になったけれど、それ以上何も言えなくて、おとなしく部屋に入ろうとする。

言祝「・・・待って」

〇〇「え?」

突然呼び止められて、肩に手を添えられる。

優しい指先はそのまま胸元に伸びて・・・

〇〇「・・・?」

彼から贈られたエメラルドのネックレスに、そっと触れた。

言祝「うん、やっぱり似合う。おやすみ、〇〇」

エメラルド色の光に微笑みを落として、言祝さんは私に背を向ける。

(おやすみなさい、と言おうと思ったけど)

私は高鳴る鼓動を胸に、ただ、立ち尽くしていた。

そしてそれから数日間、私はアマツで手厚いおもてなしを受けた。

言祝さんはずっと、本当に優しくしてくれたけれど・・・

ーーーーー

言祝「欲しいものも、好きなものも。 本当に、ないんだ」

街の人1「ほら、今日もたくさん。メイの国からの入国者よ」

街の人2「さすが、アマツだなあ。いくらメイに連れて行かれても、すぐ取り返してくる」

ーーーーー

なぜだか違和感を覚えてしまい、気持ちが落ち着かなかった。

そしてある夜・・・―。

何度目かの寝返りをうち、思い切ってベッドから起き上がった。

(少し、外の空気を吸おう)

中庭の星でも眺めようと、歩いていた時・・・

明かりの漏れている扉から、声が漏れ聞こえてきた。

国王「トロイメアの姫は、手懐けられたのか?」

(この声は、国王様?)

思わず体が硬直してしまう。

部屋の中では、国王様と言祝さんが話しているようだった。

国王「彼女を味方につければ、メイの国よりさらに優位に立てる」

先日とは違う、欲を含んだ国王の低い声が、静かに私の耳に入ってくる。

言祝「仰せのままに」

国王「褒美は何がいい?」

言祝「何もいりません」

(なんの話なの・・・?)

速まる鼓動を抑えていると、話を終えた国王様が部屋から出ようとしていた。

(・・・!)

慌てて柱の影に隠れようとしたけれど・・・

国王「これは・・・〇〇様・・・!!」

〇〇「あ・・・」

国王「聞かれてしまっては、仕方ないですね」

国王様は一瞬驚いた表情を見せたが、すぐに不気味な笑みを浮かべた。

国王「あなたにお願いがあるのです。なに簡単なこと。 トロイメアの姫が、我が国に協力すると。そう正式に表明していただきたいと思っておりましてね」

〇〇「協力・・・?」

先日とは別人のような国王様に恐怖を覚え、思わず後ずさってしまう。

言祝「父上!」

気がついた言祝さんが、勢いよく扉を開け、私と国王様の間に割って入った。

言祝「この件は任せてくださいと言ったはずです」

国王「わかった・・・後はお前に任せよう。では、姫。よろしく頼みますよ」

国王様はそう言い放って、踵を返した。

言祝「・・・」

〇〇「・・・どういうことですか?」

言祝「・・・ごめん」

彼は、そっと顔を伏せて、小さなため息を吐いた。

言祝「このアマツ国は、昔から対立しているメイという国がある。 ・・・父上はずっと、メイの国を陥れる手段を考えていたけど、上手くいかなくてね。 挙句の果てには、俺まで眠りに落ちてしまって・・・。 でも、そんな時に君が現れた。 トロイメアの姫を味方につけることで、父はメイの国の優位に立とうとしている」

言祝さんは、静かに目を伏せた。

言祝「君をもてなして懐柔させるようにと父上の命令だったんだ。 ・・・君を利用しようと思って、近づいたんだ」

言葉とは裏腹に苦々しい顔をする彼に、私は声をかける。

〇〇「・・・では。 どうして、そんなに苦しそうな顔をしているんですか?」

言祝「・・・俺は、この国の王子としてやるべきことをやる。それだけだよ」

その声が、とても苦しそうで・・・

〇〇「言祝さん・・・」

私の呼びかけに、言祝さんはぐっと唇を噛みしめた・・・―。

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