宝石箱をひっくり返したという表現がぴったりの、美しい夜景が眼下に広がっている。
〇〇「綺麗・・・」
思わずつぶやいた私に、言祝さんは新緑色の瞳を細めた。
言祝「喜んでくれて嬉しいよ」
夜景と、言祝さんの笑顔と、耳に心地よい優しい声・・・
窓に映った私が静かに微笑む。
〇〇「こんな素敵なところに、ありがとうございます」
言祝「トロイメアの姫が目覚めさせてくれたんだ。当然だよ」
そう言うと、彼は右手を胸の前に置いて、完璧な仕草で一礼して見せた。
・・・ここはアマツの国。
言祝さんを目覚めさせたお礼にと招待された私は、摩天楼で夢のようなひとときを過ごしていた。
言祝さんはバーテンダーさんと静かに言葉を交わし、やがて運ばれてきたグラスを私の前に置く。
言祝「〇〇のイメージで作ってもらった」
薄桃色の液体に満たされたグラスに、そっと口をつける。
〇〇「・・・おいしい!」
ほのかにベリーの味がするシャンパンカクテルの向こうで、言祝さんは、よかった、と微笑んだ。
言祝「目覚めさせてくれたお礼には足らないけど・・・この国を案内させてもらうよ」
色とりどりの光が輝く街並みを眺めながら、私は胸に期待を膨らませていた。
彼の優雅な微笑みの向こうにある、思惑も知らずに…-。