第4話 彼のお姉さん達

夕陽が傾き、地面に長い影を映し始めると……

カイネ君と同じように伝統衣装を身にまとった男女が、仲良さそうに歩いていくのが目に留まった。

カイネ「あの男の人は、きっと桃をあげるんだろうな」

〇〇「桃?」

カイネ「百福の桃っていって、桃花祭の時期にしかならない特別な桃があってね。 古くから、この桃を食べた女の人は幸せになるって言われてるんだ」

(百福の桃……ちょっと食べてみたいな)

カイネ「ペルシェでは昔から、男性がこの桃を好きな人にプレゼントをして告白をするんだよ」

〇〇「そうなんだ、素敵な習わしだね」

男性から桃をもらった時の女性達の笑顔を想像すると、私まで幸せな気持ちになってくる。

カイネ「あっ……!」

カイネ君が、突然大きな声を出す。

〇〇「どうしたの?」

カイネ「〇〇さんに、少し迷惑をかけるかも」

彼の視線の方向を見ると、高貴な服装の女性達が歩いていた。

??「あら、カイネじゃない!」

カイネ「姉さん達……また服を見ていたの?」

(カイネ君のお姉さん達!?)

カイネの姉1「女の子はお洒落に手を抜かないものよ!……あら?」

お姉さん達の視線が、隣にいた私へと注がれる。

カイネの姉2「もしかしてあなた、〇〇さん?」

〇〇「あ、はい! はじめまして」

カイネの姉3「噂の彼女ね。会いたかったの!」

(噂の……?)

カイネの姉1「私も! いつ来ていたの?」

いつの間にかお姉さん達に囲まれ、私は矢継ぎ早に質問される。

カイネ「姉さん達!!今日はボクが案内してるんだから!」

カイネ君が困ったように声を上げた。

カイネの姉2「邪魔しちゃったわね、ごめんごめん」

お姉さん達は、カイネ君の頭を優しく撫でた。

(カイネ君、すごくかわいがられているんだろうな……)

カイネの姉3「カイネ、今年は百福の桃を渡すんでしょう?しっかり…-」

カイネ「わあああ! もう、言わないでよ!姉さん達忙しいんでしょ!」

カイネの姉1「あら、照れちゃって。じゃあ行くわ。〇〇さん、ゆっくり楽しんでいってね」

〇〇「あ、はい! ありがとうございます」

赤い顔のカイネ君に押し出され、お姉さん達は楽しそうに笑いながら街へ消えていった。

カイネ「〇〇さん、ごめんね……姉さん達が……」

〇〇「ううん。でも……カイネ君、百福の桃を渡したい人がいるんだね」

カイネ「えっと……うん。まだ言えないんだけど」

言うのをためらうように、カイネ君は目を伏せる。

(カイネ君から桃を貰える女の人がうらやましいな)

(えっ……うらやましい?)

弟のような存在だと思っていたカイネ君に別の感情を抱き始めていることを自覚する。

まだ赤いカイネ君の横顔を見つめ、私はそっと胸を押さえた…-。

城に着き、滞在する部屋へと案内してもらった。

〇〇「カイネ君、今日はありがとう」

お礼を言って部屋へ入ろうとするけれど、カイネ君は何か言いたげに私をじっと見つめている。

カイネ「実は……〇〇さんに、お願いしたいことがあるんだ」

(カイネ君?)

真剣な表情で切り出され、私は首を傾げた…-。

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