第3話 人気者の彼

賑わう街並みを、私はカイネ君と一緒に歩いていた…-。

街道に立ち並ぶ店には、桃の花がディスプレイされている。

〇〇「そういえば、桃花祭ってどんなお祭りなの?」

ふと頭によぎった疑問を、私はカイネ君に聞いてみた。

カイネ「桃花祭は、女の子のためのお祭りなんだ! 女の子の健やかな成長を祝うお祭りで、桃の花を飾ったり、桃を食べたりする習わしがあるんだよ」

(もしかして、ひなまつりみたいな感じなのかな?)

前にいた世界の風習を懐かしく思い出す。

カイネ「あの、それで……」

カイネ君は何やら恥ずかしそうに言い淀んだ後、私をまっすぐに見つめた。

カイネ「ボクがキミをここに呼んだのは……」

(カイネ君……?)

〇〇「カイネ君、どうしたの?」

真剣な表情で見つめられ、私は首を傾げる。

カイネ君は何か言おうとしていたようだったけれど……

カイネ「えっと、その……やっぱなんでもない!」

その時…-。

街の人1「あっ、カイネ王子だ!」

カイネ君に気づいた街の人達が、嬉しそうに駆け寄って来た。

街の人1「カイネ王子!桃花祭の宴での挨拶、楽しみにしていますよ!」

街の人2「応援しています、頑張ってください!」

皆がカイネ君に向ける言葉は、どれもとても優しくて……

カイネ「ありがとう!頑張るから、皆楽しみにしててね」

彼明るく朗らかな笑顔が、その場にいる人々を和ませる。

その様子を微笑ましく見ていると、カイネ君と目が合う。

〇〇「カイネ君、人気者だね」

カイネ「えっ、そうかな……? キミにそう言ってもらえるのは嬉しいな」

おばあさん「おや、カイネ王子。今日はお散歩ですか?」

店先に立っていたおばあさんが、カイネ君に話しかけてきた。

カイネ「うん。桃花祭で賑わう街を歩きたいなって思って!」

おばあさんは私に視線を移し、にっこりと微笑む。

おばあさん「こちらは、カイネ王子の未来のお嫁さんかね?」

(私が、カイネ君のお嫁さん……!?)

〇〇「あの、私は…-」

答えに困ってカイネ君を見ると……

カイネ「……」

彼の顔が、真っ赤に染まっている。

(……あれ?)

照れているカイネ君を見ていたら、私の頬もなぜか熱くなっていく。

(カ、カイネ君は弟みたいな存在だし……)

頬に触れると、自分でもわかるほど熱い。

(カイネ君につられて、私まで赤くなっちゃた……)

私達を交互に見て、おばあさんはにこにこと嬉しそうに微笑む。

おばあさん「おやおや、本当に仲が良いんだね」

カイネ「……もう、おばあちゃん~!」

カイネ君が、困ったように声を上げた。

カイネ「〇〇さんは……お、お嫁さんとかそういうの……じゃ……」

恥ずかしいのか、カイネ君の声が次第に小さくなっていく。

カイネ「ごめんね、〇〇さん……」

〇〇「あ、ううん……私は別に……」

赤い顔でうつむく私達の横を、桃の香りを含んだ風が優しく通り抜けていった…-。

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