第4話 彼の手のひらの上で

冷たい風に身をすくめ、シュニ―君と手を繋いだまま街の中を歩いて行く。

やがて私達は、温かいものを求めて喫茶店へとやってきた。

(……なんだか、恋人同士が多いみたい)

店内は互いを愛おしそうに見つめる恋人、あるいは夫婦らしき人で賑わっている。

隣のテーブルもまさに、男性から女性にプレゼントを渡すところだったようで…-。

男性「これ……君に渡したくて」

綺麗に包装された小箱からネックレスが覗き、照明の光を受けてきらきらと輝きを放つ。

そしてもう一つ、男性が女性に手渡したのはやや不格好な焼き菓子で…-。

男性「お菓子作りなんて初めてだったから、形は歪んじゃったけど」

照れくさそうに頭を掻く男性に、女性が嬉しそうに微笑みかける。

幸せに満ちた二人の様子に、私まで心が温かくなった。

シュニ―「どうしたの?」

訝しげに首を傾げるシュニ―君の方へ、私は慌てて向き直った。

〇〇「その……手作りって、素敵だなと思って」

ちらりと横目で隣を見ると、女性はもらった焼き菓子を大事そうに抱き、お礼を言っていた。

〇〇「普段なかなかできないことをしたり、相手に伝えたり……。 そんなきっかけになれる愛の日って、やっぱりとても素敵な日ですね」

シュニ―「……」

一瞬の沈黙の後……

シュニ―君はハッとした表情を見せたかと思うと、少し不敵に笑って…-。

シュニ―「ねえ」

〇〇「?」

シュニ―「下僕が普段なかなか言えないことって何?」

思いがけない質問に、私は…-。

〇〇「……」

どう答えたものかと思案していると、シュニ―君はさらに笑みを深くする。

シュニ―「ふーん。あるんだ? 僕に言えないこと」

挑むように見つめられ、心臓が大きく跳ねる。

〇〇「……秘密です」

動揺を悟られないように平静を装ってそう答えると、ちょうど紅茶とタルトが運ばれてきて…-。

シュニ―「お前のもおいしそうだね」

興味がそちらに移ったのか、微笑むシュニ―君に、ほっと安堵の息が漏れる。

〇〇「どうぞ」

シュニ―「……じゃあ、イチゴもらうからね」

イチゴを嬉しそうに食べるシュニ―君がかわいくて、頬が緩まないように耐えていると……

今度はシュニ―君が自分のタルトのお皿を指し示した。

シュニ―「……こっちのタルト、食べてみる?」

〇〇「はい。食べてみたいです」

けれどシュニ―君は私の返事を聞くや否や、少し意地悪な笑みを浮かべた。

シュニ―「……駄目」

〇〇「え?」

シュニ―「僕に隠し事をする下僕にはあげない」

そう言うとシュニ―君はさっとお皿を自分のところに引き寄せ、上目遣いで私の反応をうかがった。

〇〇「シュニ―君……意地悪です」

シュニ―「下僕が主人に逆らう気?」

〇〇「そ、それは……」

強気なシュニ―君に言葉を飲み込むと、彼はそんな私に満足したらしく、口元に笑みを浮かべながら、自分のお皿を差し出してくれた。

〇〇「……ありがとうございます、シュニ―君」

シュニ―「特別に、だからね?」

彼に翻弄されつつも、愛おしさが胸に込み上げてくるのだった…-。

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