第5話 トラブル発生

カノエさんの演舞練習を見て以来、私は森へと見学に訪れることが多くなっていた…―。

今日はカノエさんだけではなく、一緒に踊る人全員での全体練習を行っていた。

いつもは静かな森の中に、たくさんの人の息が溢れ、湿度が上がったように感じる。

(今日は一段とすごい熱気。やっぱり人が増えると調整するのが大変みたい……)

カノエ「そこ、一拍遅れてるぞ。手拍子の後、裏拍で足をあげるんだ」

男1 「はいっ!」

カノエ「それからお前は、逆に早すぎる。皆の動きをよく見るんだ」

男2 「わかりました」

練習の間中、カノエさんの鋭い声が飛び続ける。

(すごい気迫……それに集中力)

カノエ「ここで休憩しよう」

カノエさんのその言葉で、一気に皆の緊張が解けた。

(私まで緊張しちゃった……)

森の木陰で、小さく息を吐くと……

カノエ「見飽きないのか」

カノエさんが私の傍にやって来て、汗を拭きながら声をかけてくれた。

〇〇「はい。本番さながらで、見ていて楽しいですから……それにこの踊り。 前の世界にいたときに見た、よさこいに似ているなあと思って……」

カノエ「へえ、似た演舞があるのか?」

興味を持ったのか、彼の琥珀の瞳がきらりと光った。

〇〇「はい。皆で振り付けを考えるんですが、集団で陣形や舞いに個性が出て……」

カノエ「へえ。なるほどな。確かに似てる」

カノエさんは頷きながら聞き、私をじっと見つめる。

カノエ「この祈念の儀の担当は毎年変わるんだ。 そのたびにどんな祭りになるかは、その年の王族の色が出る。 各王族が、それぞれの誇りにかけて準備をしているんだ」

熱く語るカノエさんの話に引き込まれ、静かに耳を傾けた。

カノエ「けど、見栄えや競争意識ではなく、どの王族も祭りを盛り上げたいという一心でやってることだ。 自分も民の全員が楽しめるような祭りにしたい、だから必ず成功させる」

清々しいくらいに言い切るカノエさんに、私まで胸が熱くなる。

カノエ「っ……悪い。熱く語りすぎた」

ハッと気づいたように、カノエさんが口を閉じてから首を振った。

〇〇「もっと聞きたいくらいです」

カノエ「物好きだな」

そう言ったカノエさんは横を向いていたけれど、照れているように見えた。

カノエ「と、そろそろ時間切れだ」

休憩が終わりに近づき、カノエさんが戻ろうとした時だった。

男1「お前、ぶつかりすぎだぞ。やる気あんのか?」

男2「なんだと?それはお前の方だろ!?」

突然の怒鳴り声に、心臓が跳ねる。

カノエ「何をしてる!二人とも、止めろ!」

すぐにカノエさんが飛んでいって、睨み合う二人の間に割って入った。

どうやら陣形についてもめているらしいけれど、どちらも引きそうにない。

(大丈夫かな……?)

不安になりながらも見守っていると、ついに怒りの矛先がカノエさんへと向けられた。

男2「元はと言えば王子の采配に問題があるんじゃないんですか?こんな陣形作って!」

カノエ「……!」

(そんな……)

どうにか練習は始まったけれど、険悪な空気が広がり連携が取れなくなる。

踊りの統率であるカノエさんの言葉も、虚しく響くばかりとなった。

カノエ「……」

急に入った亀裂はかなり重い問題となり、その後の練習もうまく揃わず、いまだカノエさんは不満を向けられたまま…―。

それなのに祭りの日時は刻一刻と迫ってくる。

(どうなってしまうんだろう……?)

心配なのに見守るだけしかできないことが歯がゆくて、私は無力さに胸を締めつけられていた…―。

<<第4話||太陽覚醒へ>>||月覚醒へ>>