第4話 アリスという存在は……

その後……

私達は、街を見下ろす尖塔にある、空中庭園を訪れた。

カフェテーブルでは、私達の他にも恋人達や数人のグループが、おしゃべりに興じている。

◯◯「……じゃあ、ハーツ君はアリスのこと、小さい頃に読んだその本でしか知らないの?」

ハーツ「うん。でも長寿の種族の中には、実際に見た人もいるとかって話」

紅茶の入ったカップを傾けながら、ハーツ君が話す、アリスの話に耳を傾ける。

ハーツ「俺もひと目でいいから見てみたかったけど、写真とかは残ってないみたい。 でも、もう必要ないかな、俺はお前に会えたし」

嬉しそうにはにかむハーツ君の笑顔がくすぐったい。

(でも、これは私に向けられているものじゃない)

(ハーツ君の憧れる、『アリス』に対して……)

◯◯「……」

そんなことを思って、そっとうつむくと……

ハーツ「その恥らうとこも、カワイイ! さすが俺のアリスっ! ……あ」

ハーツ君が、大きな声を出したその時…ー。

視線を感じて辺りを見回すと、周囲のテーブルが、私に奇異の眼差しを向けていた。

人々がこそこそと、『アリス』の名を口にして表情を曇らせている。

ーーーーー

ハートの女王「……アリスですって?」

ーーーーー

それはあの時の、女王様の眼差しと同じ……

(何……?)

◯◯「ハーツ君、これって……」

ハーツ「……」

ハーツ君が立ち上がり、私を周りから隠すように肩を抱いてくれた。

その時、ふとアリスのお話が頭を過ぎる。

(そういえば、童話の中ではハートのクイーンは、アリスにとって怖い存在だったはず)

(だったら……)

◯◯「……」

考えを言葉にすることができずに、ハーツ君の服をきゅっと掴むと……

ハーツ「アリス……」

私の肩を抱く彼の手の力が、強められた。

ハーツ「……実は、この国では代々『アリス』は厄災の象徴だって、悪く言う奴もいる」

◯◯「厄災……?」

ハーツ「不思議の国を作り出し……そして変革をもたらした厄災の象徴。 トランピアは特に、その影響を強く受けた地域だったんだ」

そこまで言って、ハーツ君は私をぐっと抱き寄せた。

ハーツ「けど、俺は違う!! 今日もお前とこうしていろんなとこ回れて、すっごく楽しかった! だから、その……」

言葉の先を濁して、ハーツ君が唇を震わせる。

でも…一。

トランピア衛兵「ここだ! アリスを見つけたぞ!!」

◯◯「え!?」

ハーツ「……マズイ、母上の近衛兵だ、逃げようぜ!」

私達の姿を発見した近衛兵が、カフェに侵入してきた…ー。

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