第2話 彼の優しさ

グレイシア「何やってるんだよ、お前。トロくさい奴だな」

見た目の細さよりもしっかりとした腕。

冷たく見えていた瞳には、無愛想ではあるけれど、私を気遣う光が見える。

(きれいな瞳……まるで宝石みたい)

○○「……」

グレイシア「……おい」

○○「っ、はい!」

思わず見とれていると、彼は不機嫌そうに前髪を指先に絡める。

グレイシア「なんでもないなら自分で立てよ」

見下ろすような視線に思わず私は……

○○「ごめんなさい」

グレイシア「すぐ謝るとか、プライドないのかよ」

○○「……っ」

軽蔑するような冷たい眼差しにちくりと胸に痛みが差す。

慌ててグレイシア君の腕から離れた時、足首に鈍い痛みが走る。

○○「痛……っ」

思わず声を上げてしゃがみ込むと、グレイシア君の赤い瞳が見開かれた。

グレイシア「さっきつまずいた時に捻ったのか?」

○○「だ、大丈夫……」

グレイシア「……」

グレイシア君は、呆れたように一つため息を吐いた後、私の傍に同じようにしゃがみこむ。

そして…―。

グレイシア「……まったく」

グレイシア君が手をかざすと、足にひんやりと心地よい感覚が生まれた。

○○「……魔法?」

グレイシア「ああ、本当はこんなふうには使わないけどな」

(痛みが、引いていく……)

グレイシア「これでいいだろ。後は街医者にでも見てもらえ。 ……街まではついてってやる」

○○「……ありがとう」

(冷たい人かなって思ったけど……優しいんだ)

どこまでも続く雪原を歩くき、街の入り口となる重厚な石門を抜けると……

……

真白な雪に覆われた建物の間を行き来する人達が皆、こちらに注目する。

街の人々1「まあ、フロスト様の弟君だわ!」

街の人々2「なんと! 眠りからお目覚めになったのか……」

街の人々3「ああ、これでフロスト様も喜ばれる!」

街の住人達はグレイシア君の姿を見るなり、喜ばしそうに表情を変える。

だけどそんな住人に反して……

グレイシア「……」

(あれ……? どうしたんだろう)

彼の表情が、見る間に曇っていく。

それに住人達が口々にする「フロスト」という名前…―。

○○「あの、フロスト様というのは?」

街の人々2「あんた、知らんのか!フロスト様は、この雪の国の皇太子さまだぞ!」

○○「皇太子……」

(つまり、グレイシア君の……お兄さん?)

彼に問いかけようと振り返り、グレイシア君の姿が消えていることに気づく。

○○「え……グレイシア君!?」

(どこに行ったんだろう?)

先ほどのグレイシア君の表情に陰りがあったのを思い出し、心配になる。

私は姿を消したグレイシア君を探そうと、その場から駈け出した…―。

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