第5話 安息の時間

ゲイリー「やはり不思議だ。おまえとこうしていると、自分では抑えられない憎しみの心が緩んでいく……。 なぜだろうな……」

切なくも強い口調でゲイリーさんは言って、きつく私の体を抱きしめた。

逞しく鍛え上げられた体から、彼の温もりが伝わってきた。

ゲイリー「早く呪いを解かなければ、国の民が苦しみ続けることになる。 俺は、一刻も早くこの国を救いたい……」

(ゲイリーさんの、心臓の音が聞こえる)

この優しい心の持ち主に、私の心も締めつけられた。

○○「ゲイリーさん……私にも、呪いを解くお手伝いをさせてください」

ゲイリー「……」

(ゲイリーさんの、力になりたい……)

ゲイリー「おまえといると、確かに憎しみの心は和らいでいく……しかし。 おまえまで、傷つけるかもしれない……」

(なんて悲しい声……)

○○「私は、大丈夫です。だから、自分が穢れているなんて言わないでください」

悲しくて、ぎゅっと私も彼を抱きしめ返した。

ゲイリー「おまえを、傷つけたくはないが……。 やはり、おまえとこうしていると……とても安心する。心が、凪いでいくようだ」

(よかった……)

そうしているうちに……

○○「ゲイリー……さん?」

ゆっくりとゲイリーさんの力が抜けていくのがわかった。

(もしかして、眠ってる?)

いつの間にか、ゲイリーさんは私の腕に抱かれるようにして再び静かな眠りに就いていた。

彼をそっとベッドに横たえて、私もその隣に寄り添うように座る。

(穏やかな寝顔……)

その晩、いつの間にか私はゲイリーさんの傍で眠っていた。


……

それから……

ゲイリーさんと一緒に呪いを解く手がかりを探したけれど、いっこうに手がかりは掴めないままだった。

日を追うごとにゲイリーさんの表情の陰りが濃くなっていく。

けれど、私を見る彼の眼差しは、いつも優しく感じられた……

そしてある朝…―。

目を覚ますとゲイリーさんの姿が見当たらない。

(どこに行ったのかな?)

ゲイリーさんを捜して、外へ出てみると……

ゲイリー「ははっ。よしよし、そんなにじゃれつくな」

(ゲイリーさんの声? なんだかとっても楽しそう)

ゲイリーさんと一緒にいたものは……

○○「く、熊!?」

ゲイリー「○○。起きたか。おまえも一緒に遊ぶか?」

ゲイリーさんは、とても大きな熊とじゃれ合って遊んでいるところだった。

(びっくりした……熊に襲われてるのかと一瞬、思ってしまった)

恐る恐る近づくと、ぶるりと熊が身震いをして、私は後ずさりした。

ゲイリー「怖くないぞ。こいつは優しい。ほら、撫でてみろ」

○○「は、はい……」

言われるままに、とても大きな熊に手を伸ばして、そっと触れてみる。

(あったかい)

ゲイリー「こいつも気持ちよさそうだ」

ゲイリーさんの無邪気な笑顔が、朝日に照らされて輝いている。

(こんなふうに、笑うんだ)

初めて見る屈託のない笑顔に、心臓の音がうるさくなる。

(ずっと難しい顔や、悲しい顔ばかりしてたから)

○○「ゲイリーさんは、森の動物とも仲良しなんですか?」

ゲイリー「仲良し…というのか? 気づけばいつも自然に、近くにこいつらがいるんだ」

(す、すごい……)

ゲイリー「まあ、動物は付き合いやすい。呪いが発動することもないからな」

○○「ゲイリーさん……」

その言葉に、胸が痛む。

(本当は国のことや国民のことを、誰よりも考えてる優しい人なのに)

ゲイリー「○○……?」

不意に、ゲイリーさんが、熊を撫でる私の手にそっと手のひらを重ねた…―。

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