第3話 赤く染まる瞳

部下1「大変です! ゲイリー様!! 街で盗賊が大暴れしていて……!」

ゲイリー「何……!?」

部屋の扉を叩きながら報告された事態に、ゲイリーさんは血相を変えて扉を開けた。

そこには、兵士のような格好をした男性が息を切らしながら立っていた。

部下1「すぐに来てくださいますか!」

ゲイリー「ああ、もちろんだ」

○○「ゲイリーさん……!」

ゲイリー「大丈夫だ。こいつは、俺の腹心の部下。おまえに危害は加えない」

○○「そ、そうではなくて……街へ行くんですか?」

ゲイリー「ああ、もちろん」

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ゲイリー「……いろいろと訳ありでな」

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なぜだかゲイリーさんのあの憂い顔が、ひどく気になってしまい……

○○「私も、行っては駄目でしょうか」

そう口に出してしまっていた。

ゲイリー「連れて行けるわけがないだろう。さっきの話を聞いていなかったのか?」

部下1「ゲイリー様、お早いご決断を!」

○○「……足手まといにはならないようにします」

ゲイリー「……」

ゲイリーさんは、少し思案して……

ゲイリー「ここも安全とは言えないからな。一人残していくよりはいいか」

ゲイリーさんは、諦めるように一つため息を吐くと、武器を手に持った。

ゲイリー「おまえは、俺が必ず守る」

その言葉に、胸が小さく音を立てた…―。

小屋の前に繋いでいた馬に、ゲイリーさんが軽々とまたがる。

ゲイリー「来い」

すっと私に向かって伸ばされた、大きな手を握った。

すぐに、ぐいと引き寄せられ、抱きかかえられるようにして、馬の背に引き上げられる。

(た、高い……)

ゲイリー「しっかり掴まっていろ。少し飛ばすぞ」

○○「はいっ!」

返事するや否や、ゲイリーさんが馬の手綱を引き走らせ始める。

(こ、怖い……!)

大きな動きにびっくりして、私は…―。

思わず、馬にしがみついた。

ゲイリー「馬のたてがみを持つと、馬が興奮しやすい。しがみつくなら俺にしろ」

○○「え? は、はい……あっ」

ゲイリーさんが、片手で手綱を操作しながら、しっかりと私を抱き寄せてくれた。

彼の腕の中で、猛スピードの馬に揺られながら、不思議と鼓動が速まっていくのを感じた。

(真剣な顔……)

風にたなびく黒髪が、差し込む木漏れ日に透けて輝き、美しい騎士のように見える。

凛々しい横顔に魅入ってしまっていると、不意に視線がぶつかった。

ゲイリー「どうした。今頃になって怖くなったのか?」

○○「い、いえ、そういうわけじゃ」

(見とれてたなんて、言えない)

ゲイリー「心配するな。おまえを危ない目に遭わせたりはしない」

○○「ゲイリーさん……」

何かの決意を秘めたような瞳が、凛々しく光る。

(熱い……)

彼の手の熱を感じながら、やがて街まで到着した。

盗賊1「てめえら、さっさと金目のもん出しやがれ!」

町人1「きゃああ!」

町人2「お命だけは……!」

(ひどい……!)

市街地では大剣を振り回す大男を筆頭に、10人以上もの盗賊団達が暴れていた。

市場を滅茶苦茶にし、街の人達を脅し、乱暴を働いている。

○○「これが、この国の実態……?」

その時……

ゲイリー「許せない……」

○○「え……?」

惨事を前にし、急に、ゲイリーさんを取り巻く空気が変わったような気がした。

不穏な雰囲気に胸がざわつくのを感じて、ゲイリーさんに手を伸ばす。

○○「ゲイリーさん!?」

けれども、その手は届かずに彼の体をかすめて空を切った。

ゲイリー「駄目だ……冷静になれ……」

彼は瞳をきつく閉じて、苦悶の表情を浮かべていたけれど……

ゲイリー「……」

やがて開いたその瞳には、鋭さが宿っていた。

(赤い……瞳!?)

彼の綺麗な薄紫色の瞳は、今は血のように赤く暗い色に染まっていた。

ゲイリーさんが、襟元をぐっと引き上げ、顔を隠すようにして、前方を見据えて歩き始める。

次の瞬間…―。

ゲイリーさんが盗賊団を一人、素手で殴り倒していた。

盗賊2「……っ!」

ゲイリー「……許せないっ……!!」

その後も、ゲイリーさんは盗賊を容赦なく、起き上がることすらできなくなるまでになぎ倒していく。

盗賊3「ひっ……」

その変貌に私は、その場で立ち尽くしてしまっていた。

(ゲイリーさんじゃ、ないみたい……)

○○「や、やめてください!!」

思わずそう叫ぶと、ゲイリーさんの鋭い視線がこちらに向けられる。

ゲイリー「……」

けれど、またすぐにゲイリーさんはその拳を振り上げてしまう。

(……!!)

私は、無我夢中で彼のもとへ駆け寄ると、ぎゅっとその体にしがみついた。

すると……

ゲイリー「……○○……?」

鋼のように鍛えられた体が、びくりと震える。

そして、正気に戻ったかのように、か細く私の名前を呼んだ…―。

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