第5話 監督としての誇り

さまざまな仕掛けをかいくぐって、ようやくレストランホールに着く頃……

ウィル「……君、大丈夫?」

度重なる恐怖の連続に、すっかり私の息は浅くなっていた。

○○「大丈夫じゃないです……」

ウィルさんにしがみついたままの私を安心させるように、彼の手が頭を撫でてくれる。

ウィル「うーん……少しやり過ぎたのかな? 実はね、兄さんに少し忠告されたんだよ」

○○「お兄さん……テルさんにですか?」

(確か、撮る作品の傾向は全然違ったはずだけど……)

テルさんの顔を思い出していると、ウィルさんはつまらなさそうにため息を吐いた。

ウィル「そうなんだよ。子どもも来るんだからやりすぎるなとか、限度を考えろとかって。 他の国の王子達にも何人か相談に乗ってもらったけど、もう少しマイルドにしろって言われたしね」

○○「そうだったんですか……」

ウィル「うん。でもさっきの君の反応を見ると、確かにちょっと本番までには調整した方がいいのかも。 僕としては残念だけど、このパークの成功はビオスコープたっての願いだからね」

腕を組む彼に、映画の国を支える監督としての誇りが垣間見える。

(アトラクションは怖いけど……真剣なんだよね)

○○「ウィルさん…―」

ウィル「けど」

そう言って、ウィルさんは懐から分厚いメモ帳をさっと取り出した。

ウィル「今日はオープンに向けての調査もあるし、手加減しないけれどね?」

○○「……っ」

ウィル「君の表情、一挙一動……観察させてもらうよ!」

私に、挑むような視線が向けられて…―。

○○「こ、怖いです……!」

必死に、すがるようにそう叫んだ。

ウィル「やっぱり君は最高だね。このままじゃ僕はどんどん夢中になりそうだ」

そこまで言って、ウィルさんはふうとため息をこぼした。

ウィル「このテーマパークね、数年がかりだったんだよ。何度も失敗して、嫌になったこともあったなあ」

○○「え……」

ウィル「ついに明日、プレオープンだ。けど、まだ詰めておきたい部分が山とある。 時間は限られてるけど……やれることは、やっておきたくてね」

○○「ウィルさん……」

メモを見返す彼の眼差しは、驚くほどまっすぐで熱くて……

ウィル「フィルムを撮るのとはまた別のやりがいがあって楽しいよ」

○○「……」

真剣な表情から、目を離すことはできなかった。

(絶対に成功させたいんだ……)

ウィル「○○?」

○○「あ……すいません」

レストランホールに設えられた蝋燭の光が、彼の顔を照らす。

その瞳に映し出された炎が、ウィルさんのパークにかける静かな情熱のように思えた。

○○「あの、私にも何か協力できることはありませんか?」

ウィル「君、協力してくれるのかい!?」

薄暗いレストランの中、ウィルさんの明るい声がこだました…―。

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