第3話 二人で写真を

その後…―。

さまざまなアトラクションを巡るうちに、いつしか日も陰り始めていた。

ウィル「もうこんな時間か。思ったよりいっぱい楽しんじゃったね!」

パーク内の時計を見て、ウィルさんが満足そうに笑う。

(テラーゾーンは怖かったけど……他はホラーじゃなくてよかった)

○○「はい! 楽しすぎて、あっという間に感じました」

ウィル「なら、よかった!」

いつも多忙で寝不足気味のウィルさんの顔が、今日はいつになく生き生きとしているように感じる。

(ウィルさんとこうして過ごせて……嬉しいな)

○○「ウィルさん、記念にここで一緒に写真を撮ってもらっていいですか?」

ウィル「お、記念撮影かい? いいよ、僕が撮ってあげよう。その端末貸して?」

○○「いえ、そうじゃなくて」

ウィル「……?」

○○「ウィルさんと一緒の写真を撮りたいなって……」

ウィル「えぇ!? 僕が撮るんじゃなくて、君と撮られるのかい?」

よほど意外だったのか、彼の声は上ずっていた。

○○「駄目ですか?」

ウィルさんは辺りの景観を見て、少し目を細めると……

ウィル「いいよ、撮るなら僕のいるここからのアングルがいい」

○○「……!」

突然、肩を抱かれ彼の傍に引き寄せられた。

ウィル「この夕陽をバックにして、あのテラーハウスをフレームに入れればいい?」

○○「は、はい……」

予想以上に近い距離に、頬が熱くなってしまう。

ウィル「……撮りたいって言ったのは、君だよ?」

○○「!」

恥じらう私を見て、ウィルさんはクスッと笑みをこぼす。

ウィル「お、そこの君、すまないがこのアングルで写真撮ってくれない?」

通りがかったスタッフさんに、ウィルさんは声をかけた。

スタッフ「あ、ウィル監督。もちろんですよ。けど、女性となんて珍しいですねえ」

ウィル「たまにはいいでしょ?」

端末を受け取ったスタッフさんが、私達を前にシャッターを切る。

その瞬間…―。

○○「……!」

ウィルさんの頬が、私の頬に微かに触れた。

スタッフ「はーい、撮れましたよ、監督!」

ウィル「ありがと」

スタッフ「いいえ。珍しいものが見れちゃいましたよ」

楽しそうに笑った後、スタッフさんは私達の前から去って行く。

(どうしたんだろう)

ウィル「うーん……。 撮られるって、なかなか難しいね」

彼の手の中を覗き込む。

そこには少し引きつった顔をしたウィルさんと、顔を赤く染めた私が映っていた。

(ウィルさんのこんな顔……初めて見た)

○○「……恥ずかしいです」

思わず、写真から目を逸らしてしまった。

ウィル「そうだね、慣れないことをするもんじゃないなあ」

口元を歪め、ウィルさんがもう一度画面を覗き込む。

ウィル「映画賞とかのインタビュー写真とかだと、上手く撮れるんだけどなあ。 ……君とだと、柄にもなく緊張するみたい」

○○「え…―」

穏やかに紡がれたその声が、私の耳を赤くくすぐったのだった…―。

……

しばらくして、パークの街燈が灯り始めた頃…―。

ウィル「さてと、そろそろお腹が空いてきた頃合いじゃない?」

○○「……」

(いよいよだ……)

ウィル「沈黙は肯定だよね! じゃあ出発しんこーう!」

嬉々とした様子のウィルさんに連れられ、私達はついに目的のレストランへ向かうことになった…―。

(ここがウィルさんの新作映画をモデルにしたレストラン……)

蝶番の音が大きく響く、古い洋館が目の前に現れる。

(いかにも、何か出そう……)

意を決して、エントランスへ入ると…―。

○○「―――!!」

絹を裂くような悲鳴が聞こえ、背筋が一瞬にして縮み上がった。

(こ、怖い……!)

まだ入り口であるというのに、私の足はすくみ始める。

ウィル「おっと、大丈夫かい」

気遣わしげに私を支えてくれるウィルさんの顔は、明らかに輝いていた。

ウィル「この建物、『グレータウンの沈黙』に登場した洋館がモデルになってるんだよ」

○○「そう……なんですね」

人気のないエントランスで、ウィルさんがサイドボードに置かれたベルを鳴らす。

ウィル「ねえ、誰かいないの!?」

すると奥に続く大扉が開き、いやに青白い顔をした初老の執事が現れた。

老執事?「……ア……ぅア……ぁ、ァ……」

○○「え……?」

(何? この人……目のあるはずのところに、黒い穴が空いて……)

老執事の足が奇妙に動いたかと思うと、床を滑ってこちらへ近づいてくる…―。

老執事?「……ドウぞ……コちラへ――」

○○「あ……」

その瞬間…―。

老執事「UGAAAAAaaaaaaaaaaaa――ッ!!」

真っ赤に血塗られた大口を開き、老執事が私に襲いかかった。

○○「――!! ウィルさんっ!!」

とっさに、傍にいるウィルさんの腕にしがみついてしまった…―。

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