第5話 夕焼けの街

夕陽が町並みをオレンジ色に染めている…-。

メイレーンさんの家を出てしばらく、私達は黙って歩き続けた。

(心配しないって決めてたけど……)

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メイレーン『ディオン様は……私の息子が死んだのを、自分のせいだと思っているんだよ』

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(あんな事を聞いてしまったら、どうしても心配してしまう)

〇〇「ディオンさん、あの……っ」

心を決めて声をかけた、その時……

踊り子1「ディオ~ン」

一目でそうと分かる衣装を身につけた美しい踊り子たちが、ディオンさんに抱きついてくる。

踊り子2「久しぶり。ねえ、今夜、ディオンの宿に行ってもいい?」

ディオン「久しぶりだな……アンにサン、だっけ?」

踊り子1「リジーとリリーよ! もうヤダ。今回も、たっぷり“情報”仕入れてきたのに」

(情報……)

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メイレーン『あの日から……ディオン様は、身分を隠して旅の女と遊ぶばっかりで。 でもね。あれは、世界を巡る踊り子達から、天の国の情報を集めてるんだろうね』

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(メイレーンさんも、そう言ってた)

踊り子2「ねえ、私達のこと、好き?」

ディオン「……さあな。まあ、情報の質次第ではたっぷりかわいがってやろう」

踊り子1「じゃあ、今夜こそディオンの正体教えてくれる?」

ディオン「何だ……そんなに俺の正体を知りたいなら、ここで教えてやろうか」

はぐらかすようにそう言って、ディオンさんは踊り子の服の胸元をめくる。

通りかかった男性がはやし立て、ディオンさんはそれに答えるように笑った。

踊り子2「もう……っ、いつもそうやってはぐらかして……」

踊り子さんの言葉が、ズキンと胸に響く。

(私も、いつもはぐらかされてる……)

ディオン「もう行け。今夜な」

踊り子さんが去っていくと、ディオンさんは思い出したように私に向き直った。

ディオン「なんだ、変な顔して」

〇〇「変な顔って、そんな……」

ディオン「してるだろ。顔も赤いしな」

不意に、ディオンさんが私のブラウスのリボンに手をかける。

ディオン「お前にも、教えてやろうか? ……俺の正体」

〇〇「……っ」

(心配してるのに……!)

(でも……)

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ディオン『……慰めならいらない。あれは、俺のせいだったんだ』

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ディオンさんの悲しそうな顔が頭をよぎる。

(私、ディオンさんのこと、知りたい……)

反射的に逃げようとする身体をなだめて、私はディオンさんに頷いてみせた。

すると、少し驚いた顔をして……

ディオン「……お前を巻き込むつもりはない」

静かにそう言って、ディオンさんはリボンから手を離す。

(なんて、優しい声)

(あれ、もしかして……)

―――――

ディオン『よそ見してると怪我するぞ。 一人で歩きたいというなら、それなりの覚悟があるんだろうな』

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(ずっと、私のために言ってくれていた……)

ディオンさんが、私の頬にそっと手を触れる。

ディオン「冷えてきたな」

(これも、きっと……)

ディオン「早く帰るぞ。お前に風邪でもひかれたら、またうちの執事がうるさいからな」

そう言って、ディオンさんは私に背を向ける。

その頬が夕焼けに染まり、少しだけ優しく笑ったように見えた…-。

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