第1話 やわらかな雨

地の国・イヴィア 蒼の月…―。

明るい空から雨が降り注ぐある日…―。

(なんて、綺麗……)

ディオン王子を目覚めさせたお礼に……と王様にお招きいただき、私は、地の国を訪れていた。

ディオン「雨なんて久しぶりだ」

降り注ぐ雨が陽を受けて輝き、宮庭を案内してくれているディオンさんは、まぶしそうに目を細める。

ディオン「どうだ、綺麗だろう?」

優雅に雨に濡れるディオンさんに、従者の方がそっと傘をさしかけた。

(そっか……地の国には、雨は滅多に降らないんだっけ)

無邪気に天を見上げるディオンさんを見つめていると、不意にその表情がくもる。

(そういえば……)

眉根を寄せて天を睨むディオンさんの姿は……

私に、この国の悲しい歴史を思い出させた。

かつて一つの国だった天の国と地の国が袂を分かったのは、はるか昔のこと。

それから何度か国交復活を試みるものの、両国は未だ冷戦状態にある…―。

(元は同じ国の人々がいがみあってるなんて……)

(……ディオンさん、何だかすごく悲しそう)

ディオンさんの横顔から目を離す事ができずにいると…

〇〇「あっ」

私は小さな水たまりに足を滑らせてしまう。

(あれ……?)

思わず目を閉じた私の腰元を力強い腕が支え、私はそっと目を開ける。

ディオン「よそ見してると怪我するぞ」

低い声が、私の頭のすぐ上で響く。

〇〇「ありがとう……ございます」

ディオン「お前って抜けてるよな。 こんな奴が俺を目覚めさせたとは……」

呆れたように言いながらも、ディオンさんはフッと微笑をこぼす。

その表情に、胸がかすかに跳ねたような気がした…―。

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