第3話 情報通の女主人

美しい海に囲まれたこの国の歴史を聞きながら、ダグラスさんと港町を歩く。

しばらくすると、一軒のレストランが見えてきた。

ダグラス「さあ、着いた。この店に入ろう」

〇〇「はい」

中に入ると、ふわりと食欲を刺激する香りが漂ってくる。

ダグラス「ここのシーフードは最高なんだ」

〇〇「いい匂い……」

ダグラス「味も保証するよ」

〇〇「とっても楽しみです!」

期待を込める私を見て、ダグラスさんは嬉しそうに目を細める。

ダグラスさんは、海の見える窓際の席へと私をエスコートしてくれた。

〇〇「ありがとうございます」

ダグラス「どういたしまして」

ダグラスさんが引いてくれた椅子に腰かけると、彼も向かいの席に座る。

(ダグラスさん、エスコートに慣れてるみたい)

ダグラスさんは、私が思い描いていた海賊のイメージとは少し違っていた。

美しい海と、彼の親しみやすい雰囲気に胸を弾ませていたその時…-。

??「あら、ダグラスじゃない」

エプロンをかけた女性が、ダグラスさんに微笑みかけながらこちらへとやってくる。

(すごく綺麗……お店の人……かな?)

メニューを私達の前に置くと、女性は親しげにダグラスさんと話し始める。

??「最近めっきり顔を出さないから寂しかったわ」

ダグラス「来たかったんだけど、このところ忙しくてな。 今日は俺の船がいい魚を上げたはずだから、美味い料理、期待してるぞ?」

??「まかせといて、舌がとろけるようなお料理をお出しするわ! ところで……」

その女性はこちらへと視線を移すと、興味津々といった表情で私の顔を覗き込む。

??「あら、こちらがトロイメアの?」

ダグラス「さすが耳が早いな」

??「ダグラス、私は情報通よ?」

ダグラス「ははっ、そうだったな」

(ダグラスさんを呼び捨てにするってことは、やっぱり二人は親しい仲なのかな……?)

店内に響く、二人の楽しげな笑い声を聞きながら、ふとそんなことを考えてしまう。

その時、熱い視線を感じてはっと我に返ると、女性がじっと私を見つめていた。

??「かわいいお姫様ね」

〇〇「は、はじめまして……〇〇と言います!」

ダグラス「ハハッ……そんな畏まる相手じゃない。彼女は料理屋の一女主人だからな」

女主人「よろしくね。今日はたっくさん食べていって!」

ダグラス「お前はもっと、姫様に対する礼儀を弁えろよ」

と、ダグラスさんが小さなため息と共にぽつりとつぶやく。

〇〇「いえっ! そんな……」

そんな話をしていると、昼時ということもあってか、ぞくぞくとお客さんが店内へ入ってくる。

ダグラス「ほら、こんなところで油売ってないで仕事しろ」

女主人「わかったわよ。それじゃ、ゆっくりしていってね」

〇〇「はい、ありがとうございます」

女主人はにっこり微笑み、この場を後にした。

ダグラス「騒がしくてすまないな」

〇〇「いえ、そんな……」

慌しく店内を動き回る女主人を目で追っていると、いつの間にか心に靄がかかっていることに気がつく。

(ダグラスさんみたいな人に、親しい女性がたくさんいるのは当然だよね……なのに)

(どうしてだろう……)

すると、ダグラスさんがそんな私をじっと見つめ、小さく首を傾げた。

ダグラス「〇〇、どうした?」

〇〇「あ……いいえ、なんでもありません」

ダグラス「……そうか?」

ダグラスさんは、心配そうに私の顔を覗き込む。

こうして私は、口元まで出かかっていた言葉を飲み込み、他愛ない会話を始めてしまうのだった…-。

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