第3話 本物のクリスマス

それぞれのお皿にケーキが盛りつけられると、コロレさんが穏やかに微笑んだ。

コロレ「はい。サンタさんは、〇〇さんに」

〇〇「ふふ……ありがとうございます」

サンタが乗ったチョコレートケーキを前に、気分はクリスマスへと誘われていく。

コロレ「どうぞ、召し上がれ」

〇〇「いただきます」

ケーキをフォークですくい、私はそっと口に運んだ。

口の中に、チョコのほどよい甘さとブランデーの香りが広がる。

(おいしい……!)

コロレ「うん、思ったよりかわいくできたね。味も貴方の好みに合ってるといいんだけど」

ケーキの味を確かめるように、嬉しそうにフォークを口に運ぶ。

〇〇「すごくおいしいです。優しい味だけど、少し大人っぽい香りもして……」

その時ふと、ケーキの上に飾られている小さな木に目が留まった。

(これは……)

〇〇「これってもしかして……クリスマスツリーですか?」

コロレ「うん。教えてもらったイメージで作ってみたんだけど……。 もしかして、ちょっと違う?」

コロレさんは丸みを帯びたその木を手に取り、首を傾げた。

〇〇「丸くてとてもかわいいんですけど、クリスマスツリーにはモミの木っていうのを使うんです。 三角でとがった形をしていて、木のてっぺんには星を飾ったり……。 いろんなモチーフの飾りがあって、それで皆で一緒にツリーに飾りつけるんです」

コロレ「じゃあ、チョコの飾りもかわいいかな。他には何を飾るの?」

興味津々に聞いてくれる彼に、こちらまで嬉しくなってしまう。

コロレ「次は正しいクリスマスツリーを作らないとだね」

〇〇「でも、サンタはイメージ通りですよ?」

コロレ「よかった」

マジパンのサンタを見つめ、コロレさんが微笑む。

コロレ「サンタさんって一晩で子ども達にプレゼントを配るんだよね?」

トナカイが引くそりに乗って空を飛ぶ話や、煙突から部屋に入る様子を、私はコロレさんに聞かせる。

ケーキのお皿が空になると、コロレさんはティーカップを持ち上げながら私を見つめた。

コロレ「本物のクリスマスはどんな感じなんだろう……」

そう言いながら、思いを馳せるように遠くを見つめる。

〇〇「元々はある神様の誕生日を祝うお祭りだったんですけど……。 今ではすっかり、家族や恋人……大切な人と過ごす日になってますね」

コロレ「へえ……素敵だね」

〇〇「はい。大切な人とプレゼントを贈り合って、のんびり一緒に過ごしたり……。 いつもより少し豪華なデートに出かけたり……」

コロレ「大切な人と過ごす特別な日……か」

そうつぶやきながら、コロレさんは自分の耳たぶに触れた。

髪の隙間から見えるコロレさんの顔が、段々と赤く染まっていく。

(コロレさん、どうしたんだろう?)

コロレ「〇〇さんは……クリスマス、誰と過ごすか決めてるの?」

〇〇「え……?」

不意に聞かれて、心臓がとくんと脈打った。

(もし一緒に過ごせるなら……)

思わず彼をじっと見つめてしまうと……

コロレ「……?」

コロレさんはが何度か目を瞬かせる。

(コロレさんと一緒にいられたら……)

思い切ってそう言葉にしようとしたその時…-。

??「わんわんっ!」

突然かわいらしい声が室内に響いて、言いかけていた言葉を飲み込む。

コロレ「すふれ?」

コロレさんがドアを開けると、白いふわふわの毛の犬が飛び込んできた。

コロレさんにじゃれるすふれの頭を、彼は愛しそうに撫でている。

〇〇「すふれ、こんにちは」

胸の高ぶりは収まっていないけれど、平静を装ってすふれに声をかけた。

飼い主に似ているのか、すふれは優しげな瞳で私を見上げる。

コロレ「すふれ、僕がここにいるってよくわかったね。 そっか。〇〇さんが来てるから、一緒に遊びたかったんだね」

〇〇「私も一緒に遊びたかったよ」

パタパタと尻尾を振る姿が愛らしくて……

先ほどの会話の気恥ずかしさを打ち消すように、すふれを間に挟んで私とコロレさんが微笑み合った…-。

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