第5話 デートのお誘い

奥の部屋から聞こえてくる楽団の子ども達の歌声が、静かな聖堂に美しく響き渡る。

アディエル「けどオレ、お前のこと…-」

〇〇「アディエルくん……?」

彼にあまりにもまっすぐに見つめられ、呼吸すら忘れてしまいそうだった。

熱い視線に心を縫い止められ、時が止まったとも思えた瞬間…-。

アディエル「……オレは、お前のこと特別だって思ってる」

(え……?)

真剣な声色に、胸を激しく揺さぶられる。

アディエルくんは、どこか申し訳なさそうに眉尻を下げ……

アディエル「もちろんルシアンはオレにとってすっげえ大事な存在なんだよな。けど……。 お前はルシアンとは違う。オレにとって、特別な存在っていうか……もちろん恩人ではあるんだけど。 独りよがりだったオレを変えてくれた、特別な女……なんだ。 だから、お前にも楽しんでほしい。なのにオレ、またルシアンの話ばっかして……本当にごめん」

ほんのりと顔を赤く染めながら、けれどはっきりとそう伝えてくれた。

(嬉しい……)

甘い感情が込み上げ、胸いっぱいに広がっていく。

〇〇「ありがとうございます、アディエルくん。 私も友達思いなアディエルくんのこと……素敵だって思います」

アディエル「え……?」

〇〇「アディエルくんが大切にしているものを、私も大切にしたいって……そう感じています。 だから、そんなふうに謝らないでください」

アディエル「〇〇……」

思いを言葉に乗せると、それと一緒にトクトクと鼓動が小さく音を立てる。

名前をつけられない感情を抱えながら、私は今の思いを精一杯彼に告げた。

〇〇「これからもアディエルくんのこと、たくさん教えてほしいです。 アディエルくんのこと、知りたいって思うから」

アディエル「……っ」

アディエルくんが口をきゅっと引き結ぶ。

そのまま少しだけ視線を彷徨わせた後、やがて覚悟を決めたかのように、まっすぐに私に向き直って…-。

アディエル「……あのさ」

ゆっくりと……私の手を取った。

アディエル「オレも、お前のこともっと知りたい。 さっきは怖じ気づいて言葉を引っ込めちまったけど……。 今夜……オレとデートしてくれねえか?」

言い切った彼の顔は、耳まで赤くなっていて…-。

〇〇「デート……?」

思いがけない申し出に驚いてしまい、つい聞き返してしまうと…-。

アディエル「あ……ああ。こういうの慣れてねえから、恥ずかしいんだけどさ。 恩人とか友達とか、そういうことじゃなくて……。 男としてのオレをもっと知ってほしいって意味のデート」

(男として……)

心がそわそわと落ち着かなくて、頬がほのかな熱を帯び始める。

(この気持ちは…-)

アディエル「まだ、お互いそういう気持ちをはっきりと持ってるわけじゃねえのかもしれねえけど……。 だからこそ、お互いのことを知る機会がもっと欲しいって思ってさ。 少なくともオレは……お前と、もっと先に進みたいって思ってるから」

自分の中にある彼への気持ちに、明確な線引きはまだできないけれど……

〇〇「……はい、ありがとうございます。私でよければ喜んで。 私も、アディエルくんのことがもっと知りたいから」

彼の手の熱を心地よく感じながら、私は静かに頷いたのだった…-。

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