第3話 明るい笑顔

きらびやかな会場に、羊の鳴き声が響く…-。

人々の注目の中、私達は急ごしらえの『VIP席』に座った。

(やっぱり、周りの目がものすごく気になる……)

アザリー「ん? 〇〇、暗い顔をしてどうした?」

視線など気にならないといった様子で、アザリーさんは私の瞳を覗き込んだ。

〇〇「こんなところに勝手に席を作っちゃいけないんじゃ……って」

気まずさから目を伏せて尋ねたけれど、アザリーさんの返事はない。

(怒らせちゃったかな……?)

半ば脅えながらそっと様子を伺うと……

アザリー「美味い! これも美味いな!」

〇〇「え……!?」

アザリーさんはカリムさんに果物を食べさせてもらっていた。

(き、聞いてない……!)

開いた口が塞がらず、私は瞬きを繰り返した。

すると…―。

アザリー「ん」

何を勘違いしたのか、アザリーさんは私にこんがりと焼けた肉を差し出してくる。

〇〇「あの……?」

アザリー「どうした? パーティなんて食べて踊るくらいしかすることがないだろう。 ほら、この肉上手いぞ。まだまだあるからたくさん食え」

そう言って、半ば無理矢理私の手にお肉を握らせると、自分も同じお肉にかぶりついた。

ホール係「あの、お客様」

私達に、ホール係の方が恐る恐る近づいてきた。

ホール係「恐れ入りますが、こちらはティアラの展示スペースでございま……ひっ!」

突然に羊がメ―と鳴いて、彼は後ろに飛び退く。

アザリー「ああ、床が多少固いが、僕は気にしないよ」

ホール係「いえ、そういうことではなく、間もなくこちらにティアラが…―」

その言葉に、アザリーさんが盛大に首を傾げる。

アザリー「ティアラ?」

(そっか、招待状がないから……)

〇〇「コロナ国のカーライル王子が作られたティアラに、相応しいレディを選ぶというパーティなんです」

こっそり耳打ちすると、アザリーさんの瞳がキラキラと輝いた。

アザリー「コロナのティアラ!? それはどこにあるんだ!?」

ホール係「いえ、ですから……」

ふと横を見ると、アザリーさんが背もたれに使っているのは展示用のガラスケースだった。

〇〇「ここに飾るんじゃ……」

アザリー「何!? では、早く飾れ」

ホール係「ですから……」

アザリーさんは待ちきれない様子でガラスケースを見つめる。

(ど、どうしよう。ホール係の人、すごく困ってる……)

(……そうだ!)

〇〇「えっと……アザリーさん。よかったら、会場を少し見て回りませんか?」

アザリー「会場を?」

〇〇「はい。私達、まだ、どこも見て回ってませんし」

アザリー「ふむ……確かにそうだな。それに、何だか楽しそうだ」

アザリーさんが立ち上がると、後ろでカリムさんが赤い絨毯を持って立ち上がる。

アザリー「カリム、今はいい。そういうのはオジャマムシって言うんだ。大人しくしてろ」

そう言って、アザリーさんは、私の肩に手を回して歩き出した。

アザリー「ところで、ティアラの話だけど。 あれは、どんな女が選ばれるんだ?」

〇〇「あ……えっと、私もよくわからないんです。 ただ、招待状に『私の蝶は、会場の一番の花にとまる』と書いてあって。 もしかしたら、会場一番の女性にティアラを贈呈する……という意味なのかもしれませんね」

アザリー「……」

アザリーさんの瞳が、私を真っ直ぐに見つめる。

アザリー「じゃあ、選ばれるのは君だろう」

〇〇「え?」

アザリー「君はとても綺麗だから」

〇〇「……っ」

突然に真面目な顔でそんなことを言われ、頬が熱くなるのがわかった。

アザリー「それに、何たってこの僕のパートナーになれるほどの幸運の持ち主だしね!」

屈託なく彼が笑う。

その笑顔を見て、彼の周りは何だか明るい光に満ちているようだと思った…-。

<<第2話||第4話>>