第3話 煌めく黄金色

アポロ王子の城に、一晩滞在した翌日…ー。

私は、フレアルージュの街を一人歩いて帰っていた。

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アポロ「…本当に苛々させる女だ」

アポロ「今後、二度と俺の視界に入るな。
明日、早々に帰ることを命じる」

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(怖かったけれど…あの威厳のある立ち振る舞いが忘れられない)

(王族として、か…幻滅されちゃったな…)

深くため息を吐いて、歩みを進めていると…

兵士1「おいおい、俺達は軍人だぞ?わかってんのかあ!?」

子ども「ごっ、ごめんなさい…っごめんなさい!」

兵士2「俺達の前を走り抜けるとは、度胸のあるガキじゃねえか」

兵士と思われる数名の男性達が、幼い男の子を取り囲んでいた。

街の人1「おい、あれ…」

街の人2「やめろ!あいつら、多分ダイア様の兵士だ…下手に関われば、殺されるぞ!」

周りの街の人達も、怯えた様子で誰もその場を動こうとしない。

(いけない…!)

○○「やめてください…!」

とっさに体が動いて、私は少年と兵士の間に立ち塞がった。

兵士1「なんだー?威勢のいい娘じゃねえか。あ?」

兵士が剣を引き抜き、脅すように切っ先を私の胸元にあてる。

(どうしよう、怖い…でも)

唇を引き結ぶ私を見て、男達が面白そうに笑う。

兵士「いい度胸じゃねえか」

胸元に突きつけられた刃がゆっくりと動き、今度は首筋にあてられる。

○○「…っ!」

ぞくりとする感覚に、たまらずに目を閉じかけた時…ー。

眼前で剣を弾く鋭い音が響いた。

(え…?)

まばゆい太陽の光に、黄金色の髪が煌めく…ー。

アポロ「…何をしている」

私の目の前には、大剣を手に、悠然と立ち塞がるアポロ王子の背中があった。

背後からでも、ぴりぴりと体を震わせるような怒りが伝わってくる。

○○「アポロ王子…!」

思わず名前を呼ぶと、アポロ王子はちらりとこちらを振り返り、強い視線を向けた。

アポロ「おとなしくしていろ」

ただ一言、そう言ってくれてから、すぐにその視線は、目の前の兵士達に向けられた。

兵士1「ア…アポロ王子…」

アポロ「貴様ら、あいつらの手の者か?」

(あいつら…?)

アポロ王子を前にした兵士達は、蛇に睨まれた蛙のように縮こまってしまっている。

アポロ「…良い。答えぬなら、始末するまでだ」

素早く剣を収めたかと思ったら、

ゆらりとまた、アポロ王子の体が熱を宿していく。

兵士2「ひいっ!こ、殺されるっ、殺されるぞ…!」

兵士1「こ、これが…例の力…」

○○「アポロ王子…!」

子ども「ひっ…」

街の観衆も、子どもも…

アポロ王子が生む猛炎に、怯え戸惑っている。

○○「アポロ王子っ…」

とっさに、アポロ王子の腕にしがみついてしまうと…

アポロ「…何をする。離せ」

○○「駄目です。やめてください…。 皆が…街の人や、子どもも見ています…!」

必死で訴えかけると…

アポロ「……」

すうっと、アポロ王子の体から熱が引いていった。

兵士1「い、今のうちに逃げろっ!」

兵士2「…っ!」

兵士達がその隙に、転がるようにして逃げていく。

アポロ王子はその姿を、まるで汚いものでも見ているかのような目で、見つめていた。

アポロ「…阿呆か。あの者も、貴様も」

吐き捨てるようにそう言って、アポロ王子が周りを見渡す。

街の人1「…!」

街の人2「ア、アポロ様…」

街の人々は、アポロ王子のことを怯えきった表情で見つめていた。

(どうして…)

アポロ「……」

その時…。

子ども「…アポロ王子様、ありがとう」

おずおずと、助けられた子どもがアポロ王子に声をかけた

アポロ「王が民を守るのは、当たり前だろう」

厳しい表情のまま紡がれたその言葉には、確かな強さが宿っている。

子ども「…はい!とっても強くてかっこよかったです!!」

尊敬の眼差しを浮かべる子どもを見て、アポロ王子は微かに笑みを浮かべた。

かと思ったら…ー。

アポロ「おい」

○○「っ…」

射抜くような視線が、こちらに向けられる。

(ど、どうしよう。勝手なことしちゃったから…)

アポロ「……」

彼の精強な眼差しに見つめられると、体がなぜだか熱を持っていく。

○○「……」

耐え切れずに、うつむいてしまうと…

アポロ「俺の民を救おうとしたことは、評価に値する」

○○「え…ー」

思いがけない言葉に、私は顔を上げた。

すると…ー。

アポロ「しかし、男二人相手にその無謀さは…阿呆を通り越して、ど阿呆なのか?」

初めて…緋色の瞳が、優しさを湛えた気がした。

○○「アポロ王子…」

アポロ「しかし貴様…。 ……っ!」

○○「アポロ王子っ?!」

話をしていたアポロ王子が突然、胸元を押さえて地面に膝をついた。

慌ててアポロ王子を支えようとすると…

アポロ「俺に構うな…っ!!」

ぴしゃりと、手をはね除けられてしまった。

○○「ア、アポロ王子、でも…」

アポロ王子の顔は、苦しそうに歪み青白くなっている。

(どうしたの?急に具合が…?)

アポロ「民の前だ…ぐだぐだ騒ぐなと言っている。 城へ…城へ戻るぞ。貴様も一緒に来い」

○○「え……?は、はい」

支えになればと思って差し出した手は、やはりはね除けられてしまった

けれど……

それでも、凛として歩みを進めるアポロ王子と一緒に、城へと戻ったのだった…ー。

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