第3話 皆のヒーロー

薄曇りの空を、小鳥達がさえずりながら渡っていく…-。

〇〇「見て、雨が止んできたみたいだよ」

淡い陽光を受けながら、空に手のひらをかざす。

ヘラクレス「本当だ。しばらくは天気も持ちそうだね」

ヘラクレスも空を見上げ、ほっとしたように笑った。

ヘラクレス「よし! 夜になるまで時間もあるし、それまでデートしよっか?」

(えっ、デート?)

彼らしいストレートな誘いに、胸がドキッと高鳴る。

けれど、それと同時に大切なことを思い出した。

〇〇「でもその前に、お城へ伺って国王様にご挨拶をしないと」

(今日は公務じゃないけど、お招きいただいたからには……)

そう申し出ると、ヘラクレスは複雑そうに目を伏せた。

ヘラクレス「あー……うん、そうだね。 でも、父さんは公務が詰まってるだろうし。 城に行くのは、流星群を見てからでいいよ」

(ヘラクレス……?)

太陽のようなヘラクレスの笑顔が、どこか陰りを帯びて見えた。

〇〇「うん、そうだね」

私が同意すると、ヘラクレスはほっとしたように笑った。

ヘラクレス「そうそう。だから、夜までは二人きりの時間だよ」

(ヘラクレス……やっぱり、いつもと少し様子が違うみたい)

少し気になりながらも、深くは聞かずにその場を収める。

ヘラクレス「じゃ、行こっか!」

〇〇「うん」

雨上がりの街を、ヘラクレスと並んで歩き出した。

……

雨上がりの、しっとりとした土の匂いが鼻先をかすめる。

ヘラクレスが連れてきてくれたのは、市街地から少し離れたのどかな川辺だった。

ヘラクレス「ここ、オレのお気に入りの場所なんだ~」

澄んだ空気を吸い込み、ヘラクレスが幸せそうに目を閉じる。

〇〇「素敵なところだね。ここなら星もよく見えそう」

二人で話しながら、川べりを歩いていると……

男の子「あっ、ヘラクレス王子だー!」

子ども達がヘラクレスを見つけ、嬉しそうに駆け寄ってくる。

ヘラクレス「はは、皆元気にしてた?」

駆けてきた男の子を、ヘラクレスは軽々と持ち上げてしまう。

女の子「ヘラクレス王子ー!」

気づけば肩の上に二人、伸ばした両腕に3人ずつぶら下げて……

ヘラクレス「皆、軽い軽い~! まだまだ余裕~」

子ども達を抱え、ヘラクレスは余裕の笑みを見せていた。

(やっぱりヘラクレスは力持ちだなぁ……!)

男の子「ヘラクレス王子、勝負だー!」

木の枝を剣に見たて、一人の男の子がヘラクレスに挑む。

ヘラクレス「よーし、怪力王子ヘラクレス見参! どこからでもかかってこい!」

ヘラクレスも同じように、持っていた傘を剣に見たて構えると、子ども達は大喜びで、一緒に剣士の真似事をして遊び始めた。

……

ヘラクレス「ふうー! 思い切り遊んだから汗かいちゃったよ~」

しばらく子ども達と遊んだ後、ヘラクレスが額の汗を腕でぬぐった。

〇〇「ふふ、すごく楽しそうだったね」

ヘラクレス「子ども達が誘ってくれるから、ついオレも一緒になって遊んじゃうんだ」

私はそっと手を伸ばし、少し乱れたヘラクレスの髪を整える。

(子ども達と夢中になって遊ぶヘラクレスって、なんだかかわいいな)

ヘラクレス「〇〇ちゃん……?」

ヘラクレスは真っ赤になりながら、間近で私を見つめていた。

〇〇「はい、これで大丈夫だよ」

ヘラクレス「あ、ありがとう……」

ヘラクレスはぎこちなくお礼を言って、首元に手をあてた。

ヘラクレス「や、やっぱり暑いし、ちょっと涼もうかな!」

そう言いながら、次は靴を脱いで素足になる。

ヘラクレス「〇〇ちゃんもおいでよ!」

(えっ……!?)

驚く間もなく、ヘラクレスは私の膝裏に手を入れてひょいと抱き上げ……

そのまま、すたすたと川の中へ入っていく。

〇〇「ヘラクレス!?」

突然のことに驚き、思わず彼の首筋にしがみついた…-。

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